- 著者
-
山内 惟介
- 出版者
- 中央大学法学会 ; 1891-
- 雑誌
- 法学新報 (ISSN:00096296)
- 巻号頁・発行日
- vol.122, no.1, pp.855-910, 2015-08
伝統的な理解によれば、国際私法は、国家私法間の牴触を解決する法体系であると考えられている。行為規範という視点からみると、法の内容が明確である限り、法の適用結果について予見可能であるところから紛争の予防が十分可能であると説明されてきた。しかしながら、立法の内容が明確であるというにしても、その解釈の仕方に幅があり得るため、法の適用結果について予見不能な事態が頻出している。一国内でさえこのような不安定な状況がみられることに加え、渉外事件では解決機関としての裁判所も適用可能な国家私法も複数登場するためにこの種の不安定性がいやが上にも倍増する。しかも、ある国では解決済みとされる紛争が別の国では未解決のまま残されることも稀ではない。さらに、世界共通の全地球的課題となると、どの国でも未解決のまま放置され続けている。このような状況に対して、国際私法は、いかなる現実的解決策を提供できるか。国際私法のパラダイムを根本的に転換する必要性を指摘するとともに、ひとつの可能性を提案したのがこの小稿である。