- 著者
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平居 謙
- 出版者
- 平安女学院大学
- 雑誌
- 平安女学院大学研究年報 = Heian Jogakuin University Journal (ISSN:1346227X)
- 巻号頁・発行日
- no.17, pp.9-17, 2017-03-31
2010年代における若手詩人の筆頭・最果タヒの第1詩集『グッドモーニング』の世界を本稿では分析・考察した。第2詩集『空が分裂する』や、その後の『死んでしまう系のぼくらに』『夜空はいつも最高密度の青空だ』において最果は、「都会」や「故郷」という芸術観光学的観点からみてもきわめて興味深い問題を積極的に追求する。『グッドモーニング』でもすでに「場所」という主題が色濃く表れているが、それは奇妙に鬱積しており、その後の彼女の詩集とは大いに雰囲気を異にしている。この詩集に現れる「場所」で最も多いのは「部屋」であり、それは常に「雨に濡れている」イメージを以て表現される。詩の中の「私」はそこから脱出することができていない。