- 著者
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柴田 武男
- 出版者
- 聖学院大学
- 雑誌
- 聖学院大学論叢 (ISSN:09152539)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.2, pp.201-210, 2014
貧困問題を奨学金返済問題から論じると,戦前の奨学金は育英を理念としながらもその実態は戦争遂行のための手段であった。戦後は育英も奨学も理念として無く,日本学生支援機構は修学のための学資金を貸与する金融機関となった。貧困と格差を解消する手段として無償の教育と給付制の奨学金が指摘されるが,教育の機会均等とは何か,なぜ必要なのか,それを未来への投資と経済概念で理解して良いのか疑問である。学ぶこと自体に社会が支える価値がある,という社会認識への根本的変革が必要であり,それなくしては,現代的貧困は理解できない。