著者
柴田 武男
雑誌
聖学院大学論叢 = The Journal of Seigakuin University (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.第29巻, no.第1号, pp.47-60, 2016-10

戦時下日本で行われた国家的奨学金制度設立の議論でまず問われたのが,貸与制か給付制かであった。国家が必要とする人材の確保には給費が当然であるという意見もあったが,退けられた。給費は国家財政上ほとんど不可能だが,貸費によれば国庫の負担は少ない。したがって,多数の学生に必要額を貸費できるという財政上の理由が大きかったが,子どもの教育は,親の責任においてなさるべきであり,我が国独自の美風に立脚したとされる家族主義が思想的背景としてあった。
著者
柴田 武男
雑誌
聖学院大学論叢 = The Journal of Seigakuin University
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.77-89, 2018-02

前橋市と野洲市は徴税手法で対照的である。前者は「滞納は絶対に許さない」,後者は「ようこそ滞納いただきました」という手法である。両方の手法とも市税の高い収納率を達成できるが,徴税費用を比較すると後者が低廉と見なせる。また,地方自治法の「住民の福祉の増進を図る」視点からしても,後者が望ましい。市税徴収は住民福祉の手段であり,目的ではないこと,徴税の強制力行使は慎重にという国税徴収法の精神を思い起こすことが必要である。
著者
柴田 武男
雑誌
キリスト教と諸学 : 論集 (ISSN:13452487)
巻号頁・発行日
vol.Volume30, pp.(47)-(60), 2017-03
著者
柴田 武男
出版者
聖学院大学
雑誌
聖学院大学論叢 (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.43-50, 2013

貧困問題を論じる上で河上肇の『貧乏物語』は不可欠の文献であるが,解決策を「道徳論で贅沢を止めよ」としていることで批判を浴びた。しかし,彼の「貧乏線」は現在の貧困問題に繋がる業績でもあった。現在の貧困問題は,絶対的貧困ではないが奨学金返済問題にみられるように,本来若者を支援する制度が逆に将来不安を生じさせるという意味で平成の『貧乏物語』となっている。
著者
柴田 武男
出版者
聖学院大学
雑誌
聖学院大学論叢 (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.201-210, 2014

貧困問題を奨学金返済問題から論じると,戦前の奨学金は育英を理念としながらもその実態は戦争遂行のための手段であった。戦後は育英も奨学も理念として無く,日本学生支援機構は修学のための学資金を貸与する金融機関となった。貧困と格差を解消する手段として無償の教育と給付制の奨学金が指摘されるが,教育の機会均等とは何か,なぜ必要なのか,それを未来への投資と経済概念で理解して良いのか疑問である。学ぶこと自体に社会が支える価値がある,という社会認識への根本的変革が必要であり,それなくしては,現代的貧困は理解できない。
著者
柴田 武男 シバタ タケオ
出版者
聖学院大学
雑誌
聖学院大学論叢 (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.105-118, 2013

昭和初期の新聞記事を検索すると,利息制限法改正について数多く報道がなされている。しかし,その一方で当時の帝国議会での議事録を精査すると,政府から利息制限法改正について積極的な提案は見いだせない。それでは利息制限法改正は幻で,数多くの報道はすべて誤報だったのか。そうした歴史認識を覆す文書が,国立公文書館アジア歴史資料センターに所蔵されていた。大蔵省銀行局調とあり,1936年12月24日の日付が記されている「利息制限法改正ニ関スル件」である。同資料を分析すると,当時の高金利被害を根絶しようとする意欲的で,現在の利息制限法よりも先進的な内容のものである。