著者
戸田 敬 石田 康幸
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 = Journal of Integrated Center for Clinical and Educational Practice (ISSN:13477420)
巻号頁・発行日
no.5, pp.159-167, 2006

「食」に関して、生産者と消費者のつながりが、見えにくくなっていると言われて久しい。共働きによる調理家事の簡素化、ファミリーレストランなどセントラルキッチン方式で、供されることが多い外食産業の繁盛、デパ地下などでもてはやされる「中食」など、消費者が、自ら食材に手を加えて調理することから離れていく流れは、加速度的に広まっている。さらに、「食」に関しては「食べ物」そのものだけでなく、「食べ方」などの「食べ物」と「人間」を直接的に結びつける営み自体が、従来の食文化を崩壊させながら、悪化の方向に向かっている。このことは、子どもたちも同様であり、偏食を超えた超偏食を抱えた子、食事の量を適切にコントロールできないために肥満傾向にある子、家庭の事情で夕食が「孤食」にならざるを得ない子等々、負のキーワードと密接に関係する食生活を送っている子どもたちが存在する。これらは、危急の問題として、決して看過できない状況にある。加えて、「食べ物」を大量生産の工業製品と同義的に見なしている子どもも多い。特に、本研究で取り上げる小学校学区のように生産緑地が皆無の都市中心部に居住している子どもは、日常の生活の中で農林水産業の存在を身近に感じる機会がないため、生産者と消費者とのつながりを意識することは非常に難しい。一方で、歪んだ「食」と社会の関係を正常化すべく、確実な流れも僅かではあるが、派生しつつある。近年の無(低)農薬有機栽培が歓迎される傾向に関連し、食料生産の分野では、有機JAS規格が制定され、他にも小売業界によるトレーサビリティの導入の動きなどが進みつつある。筆者らは、このような現況を踏まえた上で、持続可能な社会を創造するためには、私たちの健康や暮らしと最も密接に関係している「食」について、追究する学びが大切であり、未来社会の構成員の一員としての子どもたちを、あるべき姿の食について自分なりの考えをもてるように育みたいと考え、イネの栽培活動を取り入れた総合的な学習の時間(以下「総合」) の単元「コメコメ研究所」を開発した。本報告では、東京都のA小学校で、行ったその学習の概要と学習の過程で、見られた変容のいくつかを報告する。

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こんな論文どうですか? イネの栽培を取り入れた総合的な学習の試み-土のない学校での実践から-(戸田 敬ほか),2006 https://t.co/PhMvmEEJHc 「食」に関して、生産者と消費者のつながりが、見えにくくなっていると言われて久しい…
こんな論文どうですか? イネの栽培を取り入れた総合的な学習の試み-土のない学校での実践から-(戸田 敬ほか),2006 https://t.co/PhMvmEWkyK 「食」に関して、生産者と消費者のつながりが、見えにくくなっていると言われて久しい…
こんな論文どうですか? イネの栽培を取り入れた総合的な学習の試み-土のない学校での実践から-(戸田 敬ほか),2006 https://t.co/PhMvmEFhwK 「食」に関して、生産者と消費者のつながりが、見えにくくなっていると言われて久しい…

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