著者
涌井 剛 関 由起子
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 = Journal of Integrated Center for Clinical and Educational Practice (ISSN:13477420)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.139-142, 2017

長期入院中の高校生への学習支援が十分行われていない。その支援制度を確立するためには、当事者である入院中の高校生自身が知事への提言という行動を起こさざるを得ない現状がある。そこで本研究では、長期入院する高校生の教育支援方法とその必要性について、日々子どもたちと向き合っている教員という立場から論じる。また、高校生への学習支援制度のない自治体における支援方法のひとつとして、特別支援学校のセンター的機能を活用した高校生への支援についての実践についての効果と課題についても論じる。
著者
滝口 美樹 吉川 はる奈
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 = Journal of Integrated Center for Clinical and Educational Practice (ISSN:13477420)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.85-89, 2014

小学校中学年の仲間集団の特徴と変化に着目し、特にギャンググループの形成過程を明らかにすることで、ギャンググループが仲間関係にどのような役割を果たしているのか考察した。小学校での観察調査と質問紙調査の結果、中学年の時期には、仲間集団は取りくみたい遊びを理由に形成する状態から、固定された仲間との同一行動を求めていくように変化していった。さらに高学年にかけて、仲間関係が広がっていき、学校生活の中で「楽しい」時間は「休み時間以外」と答える児童がふえるなど、学習、行事等で友達と一緒に活動することで楽しさを感じていた。
著者
加藤 智子 尾﨑 啓子
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 = Journal of Integrated Center for Clinical and Educational Practice (ISSN:13477420)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.49-55, 2017

本研究は、平成27年度に教育学部附属特別支援学校中学部3年生で取り組んだ、木工製作活動の実践を素材として、他者とのかかわりの観点から生活単元学習のもつ可能性を検討した報告である。中学部2年間で積み重ねた学習経験から、知的障害のある生徒たちが見通しを持って取り組める木工活動を基盤にした他者とのかかわりを段階的に設定することは、自信や製作への動機づけを高めることに役立った。「誰が」「何を必要としているか」「誰に」「何を製作するか」を、活動の導入で伝えることが、生徒の主体性を引き出す上で重要であった。
著者
戸田 敬 石田 康幸
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 = Journal of Integrated Center for Clinical and Educational Practice (ISSN:13477420)
巻号頁・発行日
no.5, pp.159-167, 2006

「食」に関して、生産者と消費者のつながりが、見えにくくなっていると言われて久しい。共働きによる調理家事の簡素化、ファミリーレストランなどセントラルキッチン方式で、供されることが多い外食産業の繁盛、デパ地下などでもてはやされる「中食」など、消費者が、自ら食材に手を加えて調理することから離れていく流れは、加速度的に広まっている。さらに、「食」に関しては「食べ物」そのものだけでなく、「食べ方」などの「食べ物」と「人間」を直接的に結びつける営み自体が、従来の食文化を崩壊させながら、悪化の方向に向かっている。このことは、子どもたちも同様であり、偏食を超えた超偏食を抱えた子、食事の量を適切にコントロールできないために肥満傾向にある子、家庭の事情で夕食が「孤食」にならざるを得ない子等々、負のキーワードと密接に関係する食生活を送っている子どもたちが存在する。これらは、危急の問題として、決して看過できない状況にある。加えて、「食べ物」を大量生産の工業製品と同義的に見なしている子どもも多い。特に、本研究で取り上げる小学校学区のように生産緑地が皆無の都市中心部に居住している子どもは、日常の生活の中で農林水産業の存在を身近に感じる機会がないため、生産者と消費者とのつながりを意識することは非常に難しい。一方で、歪んだ「食」と社会の関係を正常化すべく、確実な流れも僅かではあるが、派生しつつある。近年の無(低)農薬有機栽培が歓迎される傾向に関連し、食料生産の分野では、有機JAS規格が制定され、他にも小売業界によるトレーサビリティの導入の動きなどが進みつつある。筆者らは、このような現況を踏まえた上で、持続可能な社会を創造するためには、私たちの健康や暮らしと最も密接に関係している「食」について、追究する学びが大切であり、未来社会の構成員の一員としての子どもたちを、あるべき姿の食について自分なりの考えをもてるように育みたいと考え、イネの栽培活動を取り入れた総合的な学習の時間(以下「総合」) の単元「コメコメ研究所」を開発した。本報告では、東京都のA小学校で、行ったその学習の概要と学習の過程で、見られた変容のいくつかを報告する。
著者
山下 久美 首藤 敏元
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 = Journal of Integrated Center for Clinical and Educational Practice (ISSN:13477420)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.177-188, 2005

1989年に三重県内の保育園の周囲の自然環境を調査した研究がある(河崎1991)。当時の保育園の立地は半数弱が、農業地、漁業地、林業地であり、自然に恵まれた環境であったことが示されている。しかし、住宅地と、商業地の中にある保育園は、自然が「少しはある」または「ほとんどない」と回答している割合が高かったため、将来このような地域が増えることが懸念されていた。その懸念どおり、日本では都市部への人口集中は続いており、幼児たちの周りからはますます自然が奪われている。日常生活の中では身近に自然の中にいる動物と触れ合えなくなってきた今日、乳幼児施設での動物飼育の意義が高まりつつあると考えられるが、近年は駅型保育所の建設も盛んであり、その環境を考えると必ずしもその重要性が理解されているとは言えないように見える。動物の飼育が乳幼児にとって重要であることを今まで以上に意識し、多くの現場で子どもたちが命と触れ合えるようにする必要があるのではないだろうか。そのため動物飼育が乳幼児に与える影響について言及している研究を、本論では取り上げるが、それに先立ち、幼稚園や保育園における動物飼育の現状についても把握する必要があると考える。まず実態を把握し、次に動物飼育の教育効果について検討する。それと同時に飼育経験効果の研究方法について検討を加え、今後の研究のあり方を探ることも本論の目的である。特に保育現場において有効な教材となり得ると思われるムシと子どもの関わりについて重点を置きながら研究を取り上げ、考察を進める。なおムシ類とは生物学上の分類にはこだわらず、子どもたちが日常「ムシ」と呼んでいる、昆虫類や、カタツムリ、ダンゴムシなどを含めた「小さな無脊椎動物(落合,1997)Jをさすものとする。また検討する論文は、N1 1論文情報ナビゲータによって検索されたものを対象とする。
著者
源 証香 小谷 宜路
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 = Journal of Integrated Center for Clinical and Educational Practice (ISSN:13477420)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.9-15, 2014

保育士及び幼稚園教諭養成校である短期大学・大学を対象に、保育内容5領域の各論(健康、人間関係、環境、言葉、表現)と、保育内容総論の授業を担当する教員が、どのような研究の専門分野をもっているのか、その実態を調査した。調査の結果、それぞれの授業科目ごとに、担当教員の専門分野の傾向に違いが見られた。また、全体にかかる傾向として、複数の専門分野をもつ研究者が増えていること、教科教育学を専門分野とする研究者や、保育実践者から養成校教員となった者が、保育内容の授業科目を担当することが増えていることがわかった。調査結果を基に、今後必要とされる「保育内容」に関する研究の方法や内容を展望し、考察した。