著者
藤倉 雄司 本江 昭夫 山本 紀夫
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館調査報告 = Senri Ethnological Reports (ISSN:13406787)
巻号頁・発行日
no.84, pp.225-244, 2009

キヌア(Chenopodium quinoa)およびカニワ(Ch. pallidicaule)は,アカザ科に属する一年性の雑穀でアンデス高地を中心として古くから栽培されてきた。これらの雑穀は,種子の表面に植物毒のサポニンをもっており,強い苦味成分のため毒妓きしなければ食用とならないが、一部地方ではキヌアの耕地に見られる随伴雑草も毒抜きして利用されている。一般に植物毒は栽培化の過程で失われる傾向があるが、キヌアがこうした特徴を維持しているのは,サポニンが動物からの食害を防ぐ役割を果たしているこどが示唆された。一方、キヌアもカニワも,野生植物の特徴であるとされる種子の脱落性をもち,この点でもこれらの雑穀は野生種の特徴を依然として有している。これは,キヌアやカニワがアンデス高地で重要な食用となってきた根菜類の陰で,その重要性が低いため十分に栽培化が進まなかったからであると考えられる。山本紀夫編「ドメスティケーション : その民族生物学的研究」

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