著者
桂 圭佑 Bonifacio A. 藤倉 雄司 安井 康夫 藤田 泰成
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.93, no.11, pp.951-958, 2018 (Released:2019-04-18)

キヌア(Chenopodium quinoa Willd.)はその高い栄養学的価値と幅広い環境適応性から,近年注目を集めている。また,2016年にキヌアのゲノム概要配列が解読されたことから,今後有用遺伝子の単離などの研究も急速に進むことが期待されている。そのような中,世界最大のキヌア生産地の一つであるボリビア多民族国(以下ボリビア)のアルティプラノでキヌア栽培の視察を行った。現地では主に高地型(Altiplanoタイプ)キヌアと塩地型(Salarタイプ)キヌアが栽培されている。高地型キヌアは比較的降水量の多い地域(年間約400mm)でバレイショやムギ類と輪作して栽培されている一方で,塩地型キヌアはウユニ塩湖畔の降水量が少ない地域(年間約200mm)において単作で栽培されている。近年のキヌアブームにより栽培面積の拡大や休閑期間の短縮が進み,現地では土壌劣化の進行が指摘されており,キヌア栽培の持続性の低下が懸念されている。そのため,育種による耐病性の付与や早生化,生物農薬や生物資材の開発,現地に自生する植物を利用した風食対策や土壌肥沃度の維持・向上,耕畜連携による持続可能性の向上などの数多くの取り組みがなされている。また,キヌアの遺伝資源の管理やその効率的な利用体制の構築は喫緊の課題である。
著者
藤倉 雄司 本江 昭夫 山本 紀夫
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館調査報告 = Senri Ethnological Reports (ISSN:13406787)
巻号頁・発行日
vol.84, pp.225-244, 2009

キヌア(Chenopodium quinoa)およびカニワ(Ch. pallidicaule)は,アカザ科に属する一年性の雑穀でアンデス高地を中心として古くから栽培されてきた。これらの雑穀は,種子の表面に植物毒のサポニンをもっており,強い苦味成分のため毒妓きしなければ食用とならないが、一部地方ではキヌアの耕地に見られる随伴雑草も毒抜きして利用されている。一般に植物毒は栽培化の過程で失われる傾向があるが、キヌアがこうした特徴を維持しているのは,サポニンが動物からの食害を防ぐ役割を果たしているこどが示唆された。一方、キヌアもカニワも,野生植物の特徴であるとされる種子の脱落性をもち,この点でもこれらの雑穀は野生種の特徴を依然として有している。これは,キヌアやカニワがアンデス高地で重要な食用となってきた根菜類の陰で,その重要性が低いため十分に栽培化が進まなかったからであると考えられる。
著者
藤倉 雄司 本江 昭夫 山本 紀夫
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館調査報告 = Senri Ethnological Reports (ISSN:13406787)
巻号頁・発行日
no.84, pp.225-244, 2009

キヌア(Chenopodium quinoa)およびカニワ(Ch. pallidicaule)は,アカザ科に属する一年性の雑穀でアンデス高地を中心として古くから栽培されてきた。これらの雑穀は,種子の表面に植物毒のサポニンをもっており,強い苦味成分のため毒妓きしなければ食用とならないが、一部地方ではキヌアの耕地に見られる随伴雑草も毒抜きして利用されている。一般に植物毒は栽培化の過程で失われる傾向があるが、キヌアがこうした特徴を維持しているのは,サポニンが動物からの食害を防ぐ役割を果たしているこどが示唆された。一方、キヌアもカニワも,野生植物の特徴であるとされる種子の脱落性をもち,この点でもこれらの雑穀は野生種の特徴を依然として有している。これは,キヌアやカニワがアンデス高地で重要な食用となってきた根菜類の陰で,その重要性が低いため十分に栽培化が進まなかったからであると考えられる。山本紀夫編「ドメスティケーション : その民族生物学的研究」
著者
桂 圭佑 Bonifacio Alejandro 藤倉 雄司 安井 康夫 藤田 泰成
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.93, no.11, pp.951-958, 2018-11

キヌア(Chenopodium quinoa Willd.)はその高い栄養学的価値と幅広い環境適応性から,近年注目を集めている。また,2016年にキヌアのゲノム概要配列が解読されたことから,今後有用遺伝子の単離などの研究も急速に進むことが期待されている。そのような中,世界最大のキヌア生産地の一つであるボリビア多民族国(以下ボリビア)のアルティプラノでキヌア栽培の視察を行った。現地では主に高地型(Altiplanoタイプ)キヌアと塩地型(Salarタイプ)キヌアが栽培されている。高地型キヌアは比較的降水量の多い地域(年間約400mm)でバレイショやムギ類と輪作して栽培されている一方で,塩地型キヌアはウユニ塩湖畔の降水量が少ない地域(年間約200mm)において単作で栽培されている。近年のキヌアブームにより栽培面積の拡大や休閑期間の短縮が進み,現地では土壌劣化の進行が指摘されており,キヌア栽培の持続性の低下が懸念されている。そのため,育種による耐病性の付与や早生化,生物農薬や生物資材の開発,現地に自生する植物を利用した風食対策や土壌肥沃度の維持・向上,耕畜連携による持続可能性の向上などの数多くの取り組みがなされている。また,キヌアの遺伝資源の管理やその効率的な利用体制の構築は喫緊の課題である。