- 著者
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木村 由香
安藤 孝敏
- 出版者
- 横浜国立大学技術マネジメント研究学会
- 雑誌
- 技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, pp.1-19, 2018-03-31
近年、「終活」と呼ばれる、自らの死に備える動きが見られる。終活とは、マス・メディアによって作られた言葉である。2009 年週刊朝日での連載記事によるものとされ、当初は主に葬儀や墓に関する内容を指した。終活という言葉が広がるにつれ、その内容に相続、財産整理、延命治療、介護、認知症、また遺品整理などが含まれるべきとの動きが生じ、現在では辞書でもそのように定義されている。つまり終活とは、マス・メディアによって作られ、世相を取り込み多様な内容を含む広義の言葉として変化したと言える。このことは、終活に関わる人々や企業、団体によってそのとらえ方が異なる可能性も示唆する。そこで本研究では、今一度終活がマス・メディアによって作られた葬儀や墓への備えを中心とした言葉であることに留意しつつ、終活に関するマス・メディアのとらえ方とその変遷を明らかとすることを目的とする。そのために、「終活」の語を含む新聞記事について、テキストマイニングを用いて内容分析を行った。記事数は、2015 年をピークとしつつ2016 年・2017 年ともに同水準で推移し、かつ読者投稿の比率が年々増加しており、終活は一般に浸透していることが伺えた。記事の内容からは、葬儀や墓についての内容を依然としてその中心としつつ、明るい側面を強調する形で報道されてきたことから、終活に取り組むことを肯定する視点でとらえてきたことがわかった。さらに近年では徐々に生活者の視点を取り込みつつあり、その内容はまさに変化の時期あることが示唆された。