- 著者
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樋熊 亜衣
- 出版者
- 首都大学東京・都立大学社会学研究会
- 雑誌
- 社会学論考
- 巻号頁・発行日
- no.38, pp.29-58, 2017-11
本稿は1950年から2009年までに女性団体により発行されたミニコミ(127誌)のテキストマイニングを行ない,彼女たちの話題の変遷を明らかにした.ミニコミとはオルタナティブ・メディアの一つであり,フェミニズムの発展には欠かすことのできない存在である.女性たちはこれまで,ミニコミという紙面のうえでコミュニケーションを図ってきた.そこで女性たちは何について語ってきたのだろうか,これを明らかにすることが本稿の目的である.筆者はまず,ミニコミの記事のタイトルに用いられた語上位30位を抽出した.ここで注目したのは,①呼称の変化(婦人,女,女性),②時代を反映した語(例えば優生保護や家庭科など)である.またある時期に現れ,その後継続して使用され続けている語(差別,性,人権,暴力)についても説明した.最後に,新しい問題として「差別」と「性」の語について,それぞれの共起する語を抽出した.「差別」は,「条約」「男女」「性」「賃金」「雇用」「婚外子」といった語と共起が多くみられた.また「性」と共起する語は「差別」から「暴力」へ移行しており,「性」を語るうえで「暴力」という概念が重要な役割を果たしていたと主張した.