- 著者
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越智 敏夫
- 出版者
- 新潟国際情報大学国際学部
- 雑誌
- 新潟国際情報大学国際学部紀要 = NUIS journal of intenational studies (ISSN:21895864)
- 巻号頁・発行日
- no.2, pp.73-82, 2017-04
カナダ・フランス語圏の演出家、俳優のロベール・ルパージュの舞台「887」を主題として、個人的経験と集合的記憶の関係について試論的に検討した。劇中、カナダの多文化主義的な状況を背景として、主人公はケベックの作家ミシェル・ラロンドの詩「Speak White」を暗唱しようとしながら、同時に自らの幼年時代を振り返る。「白く話せ」という植民地的言説を記憶することと、亡父を中心とした家庭内の記憶を回顧するということを対比させることによって、ケベック社会の共同的経験と、そこで生きる個人の政治的意味を問う舞台である。その舞台批評を通して共同体の政治的経験と個人の政治参加の関係を論じた。