著者
越智 敏夫
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学国際学部紀要 = NUIS journal of intenational studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
no.1, pp.75-88, 2016-04

第一次世界大戦から第二次世界大戦にいたる時期、いわゆる「大戦間期」において日本の政治学は特異な発展を遂げたといえる。それは大正デモクラシーから始まり、天皇制ファシズムと超国家主義の勃興へといたる時期である。この現実政治と政治学的認識の同時的展開はどのように呼応していたのか。戦後政治学はこうした経験に対する「悔恨共同体」として始まったと丸山眞男は述べ、政治理論の有意性と科学性に関する論文によって戦後日本の民主化に深く関わった。その丸山の論考に対する高畠通敏の批判と継承の両面について検討する。その作業によって政治理論の現実政治に対する有効性の観念について考察し、戦後民主主義の理念的特性に関する議論を展開した。
著者
唐 利国
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学国際学部紀要 = NUIS journal of intenational studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
pp.43-47, 2015-07

1978年に「改革開放」の政策に転じる以来、中国経済は高成長を続けてきていた同時に、貧富の差が拡大しつつ、格差社会が顕著となっている。その要因として、「都市と農村の格差」・「地域の格差」・「産業の格差」・「腐敗問題」の四つがある。2013 年、中国中央政府の政権交代以来、習近平主席も格差社会を是正するために、さまざまな政策を講じている。収入分配制度の改革と都市化の推進は、今の中国政府の重要な施策だ。そして、より根本的な政策として、今の中国政府は政治改革をさらに推進する必要がある。より健全な市場体制を構築する以外、格差を解決する方法がない。
著者
石田 淳
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学国際学部紀要 = NUIS journal of intenational studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
no.5, pp.101-107, 2020-04

国際政治学分野に教科書は数多あれどもリーディングスは滅多に見かけない。なぜなら、そもそも論争らしき論争がないからである。そしてこの論争の不在は、専門領域ごとの研究者の棲み分けに由来する。この状況は研究の持続的発展を触発するものではない。とは言え、論争がなかった訳ではない。ただし、その意味が正確に理解されなければ、学知の蓄積はない。その論争とは、冷戦期日本の防衛姿勢の「意図せざる結果」をめぐる議論である。高坂正堯の「現実主義者の平和論」は、坂本義和の「中立日本の防衛構想」を、西太平洋におけるアメリカを基軸としたハブ・アンド・スポークスの同盟構造に起因する《同盟のディレンマ》を直視するものではないため、所期の安全保障効果をもたないと評価した。しかし坂本は、同時代のシェリングのコミットメント論を意識しつつ、《安全保障のディレンマ》を直視しない防衛構想は、所期の安全保障効果をもたないと論じていたのである。
著者
藤瀬 武彦
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学国際学部紀要 = NUIS journal of intenational studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
no.4, pp.145-157, 2019-04

The author has presented part of a collection of Olympic memorabilia which he started in around 1984, about 35 years ago. The initial report includes a photograph collection from the fifth modern Olympic Games held in Stockholm in 1912, which were also the first Olympics in which Japan participated, and a ticket for the marathon featuring Shiso Kanakuri; the bidding album for the twelfth Summer Olympics which were due to be held in Tokyo in 1940 but were cancelled because of the Sino-Japanese war; the album (from the 1949 National Amateur Athletic Union Swimming Championship) was sent to Masaji Tabata (at that time head of the Japanese Swimming Federation) by Fred Isamu Wada, who did the bidding activities at his own expense for the eighteenth Tokyo Summer Olympics, the first Olympics held in Asia in 1964; autographed paper from the Japanese Athletics Team celebrating Kokichi Tsuburaya's winning of the bronze medal in the marathon; identity cards of players and officials, etc. These memorabilia should be collected, preserved and displayed in a sports museum as sports cultural assets.
著者
田中 敦
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学国際学部紀要 = NUIS journal of intenational studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
no.4, pp.131-143, 2019-04

本論では、案内表示に用いられるピクトグラムを記号と捉え、その解釈を認知という動的なプロセスの中で分析することを試みる。 まず、ピクトグラムが、約定性とともに類像性によって対象を指示する記号原理を有することを明らかにし、そのことが原理的に多義的な解釈を許容することを確認する。ただし、案内表示は情報伝達を機能として有するものであり、本来、解釈の多義性は許容されない。 そこで本論では、認知という観点を導入し、認知領域とコンテクストの関与によって、多義性が限定されるプロセスを分析する。具体的には、「空間ドメイン」と「行為ドメイン」という認知領域の区別により、同一のピクトグラムから異なる解釈が導かれることを確認したうえで、案内表示が設置される環境がコンテクストとなり、認知領域の設定を促すことを指摘する。
著者
瀬戸 裕之
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学国際学部紀要 = NUIS journal of intenational studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
no.4, pp.21-42, 2019-04

本論文は,フイ・ポンセーナー博士のライフヒストリーをもとに,ラオス司法省元高官の経験からラオスの現代史について考察する。フイは,青年期にフランスに留学し,ラオス王国政府軍人としての経歴を積み,1975 年以降には再教育キャンプで生活する苦難を経験した。しかし,現体制が刷新政策を開始すると,司法省官房長に任命され,国際機関や西側諸国から法整備に関する支援を誘致し,プロジェクト管理を担当するなど現体制での国家建設にも貢献した。フイの経験から,1975 年以前のラオスの国家形成におけるフランスの影響力の大きさ,革命以前のラオス王国政府軍人が抱えていた困難,現体制の成立後の旧ラオス王国政府元軍人・元役人の不遇,並びに旧ラオス王国政府の元軍人・元職員が1980 年末以降にラオスが西側諸国との交流を深める過程で国家建設に貢献した可能性を示し,現体制下で旧ラオス王国政府の元職員たちが果たした役割について,再評価が必要であることを指摘する。
著者
越智 敏夫
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学国際学部紀要 = NUIS journal of intenational studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
no.2, pp.73-82, 2017-04

カナダ・フランス語圏の演出家、俳優のロベール・ルパージュの舞台「887」を主題として、個人的経験と集合的記憶の関係について試論的に検討した。劇中、カナダの多文化主義的な状況を背景として、主人公はケベックの作家ミシェル・ラロンドの詩「Speak White」を暗唱しようとしながら、同時に自らの幼年時代を振り返る。「白く話せ」という植民地的言説を記憶することと、亡父を中心とした家庭内の記憶を回顧するということを対比させることによって、ケベック社会の共同的経験と、そこで生きる個人の政治的意味を問う舞台である。その舞台批評を通して共同体の政治的経験と個人の政治参加の関係を論じた。
著者
安藤 潤
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学国際学部紀要 = NUIS journal of intenational studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
no.1, pp.15-38, 2016-04

本論文では1980 年以降の四半期データを用いて米国における防衛部門経済の外部効果を実証的に考察した.防衛経済学の先行研究で従来用いられてきたFeder-Ram モデルは多重共線性の発生を始めとしていくつかの推定上の課題を持つが,モデルを修正し,多重共線性を発生すると考えられる説明変数を標準化することでその課題を克服した.ポスト冷戦期では防衛部門経済から非防衛部門経済への,そして防衛部門経済から民間部門経済への有意な正の外部効果が存在し,それら弾性値はともに0.001(年率換算で0.004)であることが明らかにされたが,冷戦期では有意な外部効果は確認されなかった.また米国は両期間において防衛支出拡大による経済成長率押上げ効果を享受することが可能であったこと,ただしその経済成長率押上げ効果は冷戦期がポスト冷戦期を上回っていたことも明らかにされた.
著者
安藤 潤
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学国際学部紀要 = NUIS journal of intenational studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
pp.179-188, 2015-07

本論文では米国の1981―2013 年の年次データを用いてFeder モデルを推定し,防衛部門経済から民生部門経済への外部効果と防衛部門経済産出高がマクロ経済成長に与える影響について実証的に分析した.その際,先行研究におけるいくつかの課題を克服するべく推定上の改善を行った.その結果,外部効果は存在しないが,前年における防衛部門経済産出高に対する民生部門経済産出高の比率が12.28 %から以上21.71%の範囲であれば前年のGDP に対する対前年比防衛部門経済産出高増加額の比率はマクロ経済成長に対して有意なプラスの効果をもたらすこと,そしてその範囲であれば防衛部門経済と民生部門経済の限界生産力の差は有意で,前者は後者より0.003 から0.007 ほど高いことが明らかにされた.
著者
安藤 潤
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学国際学部紀要 = NUIS journal of intenational studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
no.1, pp.39-62, 2016-04

本論文では日本の1980 年以降の四半期データを用い,多重共線性の発生を抑制しつつ,Feder-Ram モデルを推定して防衛部門経済の外部効果を実証的に考察した.その結果,冷戦期では防衛部門経済から非防衛部門経済への,そして防衛部門経済から民間部門経済への有意な負の外部効果が存在し,それら弾性値はともにほぼ- 0.020(年率換算で- 0.080 程度)であることが明らかにされたが,冷戦期では有意な外部効果は確認されなかった.また,三部門モデルの推定結果から日本は両期間において防衛支出拡大は経済成長率を引き下げることも明らかにされた.