著者
金野 美奈子
出版者
東京女子大学現代教養学部国際社会学科社会学専攻紀要編集委員会
雑誌
東京女子大学社会学年報 = Tokyo Women's Christian University annals of sociology (ISSN:21876401)
巻号頁・発行日
no.1, pp.32-48, 2013

職場と家族の歴史的関係をめぐる従来の議論では,男性ホワイトカラーに関しては戦前から近代家族モデルが前提とされており,戦後のライフステージ対応賃金の画期性はそのような前提を取り込んだ処遇の論理がブルーカラーにも広く適用されたことにあると主張されてきた.しかし,〈生活の論理〉としての近代家族モデルと〈処遇の論理〉としての近代家族モデルを区別して歴史的な流れを検討すると,従来の見方は必ずしも支持されない. たしかに戦前の男性ホワイトカラーにとって,その階層意識と相まって近代家族モデルは暗黙の社会的前提であったが,組織からの処遇の論理はそのようなモデルを基礎に組み立てられていたわけではなかった.職場からの処遇はあくまでも,基本的には仕事上の評価に基づくものとされ,近代家族的な生活の理想は組織成員としての処遇に応じて,現実には異なった程度に実現されたりされなかったりするものにすぎなかった.戦後,ライフステージ対応賃金という形で〈生活の論理〉を基礎とした〈処遇の論理〉が一定の成立をみたことは,次第に「標準的」生活の概念を具体化していった戦間期,「国民生活」の概念によって〈生活の論理〉を決定的に立ち上がらせた戦時期を経て,初めて可能となった.

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[gender][Japan][labor][family][reminder] 金野 美奈子 (2013) _東京女子大学社会学年報_ 1:32-48 ISSN:21876401

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金野 美奈子 (2013) _東京女子大学社会学年報_ 1:32-48 / “CiNii 論文 -  <生活の論理>と<処遇の論理> : 男性ホワイトカラーにおける近代家族モデルの歴史社会学” http://t.co/c2DGpdwGav

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