- 著者
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帖佐 尚人
- 出版者
- 鹿児島国際大学福祉社会学部
- 雑誌
- 福祉社会学部論集 = Quarterly journal of welfare society (ISSN:13466321)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.2, pp.17-26, 2014-10
「親のライセンス化」論は、子の出産・養育に先立って、全ての親に一定のライセンス取得手続きを要求することで不適格な親(incompetent parent)を排除し、全ての子どもが適格性を有する親による保護・養育を受けられるようにすることを企図したもので、1980年にアメリカの倫理学者H.ラフオレットが提唱して以降、賛否両論の活発な議論が展開された。しかし、実のところこの主張は極めて極端なものであり、あくまで思考実験レベルでの議論にとどまるものであると捉えるのが妥当であろう。そこで本稿では、この「親のライセンス化」の代替策、つまり親の権利制約をより少ない次元にとどめつつも、一方で児童虐待を事前的レベルで抑制し得る理論・制度を探求することを目的として、アメリカの児童精神医学者J.ウェストマンの青年期妊娠・出産規制論を検討する。彼の主張は、別稿で取り上げた上記のラフオレットの代替的理論とは異なり、「親のライセンス化」という発想の実質的な放棄を試みている点で特徴的と言えよう。