著者
北舘 佳史
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.89, pp.333-358, 2018

本稿ではカンタベリ大司教アビンドンの聖エドマンドの奇跡関連史料を分析の対象として13世紀半ばの奇跡の記録の実践のあり方を明らかにすることを目的としている。13世紀には教皇の列聖手続きの発展とともに審問記録という新しい史料類型が登場し,一方で教会や修道院が作成する伝統的な奇跡集は衰退していくと見なされている。ところで聖エドマンドの奇跡に関しては列聖調査委員会が作成した審問調書と聖遺物を所有するポンティニー修道院の作成した奇跡集の両者が存在している。これらの史料を形式面と内容面で比較検討して史料の性格を明らかにし,さらに修道院による奇跡話の収集と立証のあり方を検討して奇跡を記録することの意味について考察する。そこには聖性の承認に関する教皇側の論理と地域社会の側の論理が表れており,13世紀半ばにおいても聖性の評判について共同的に合意を形成する上で奇跡集の役割が残されていたことが結論付けられる。

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