著者
谷川 嘉浩
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科
雑誌
人間・環境学 (ISSN:09182829)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.89-99, 2018

本稿は, 経験を書くこと, 生活を記録することをめぐる鶴見俊輔の思想を探索する. 彼の思想を貫くのは, 日本の知識人が状況変化に応じて態度転換していったことへの批判である. その場の解答をなぞるだけの優等生は, 知的独立性を失いがちなのだ. これへの対処として, 自身の経験に基づく作文に鶴見は注目した. 本稿の目的は, 自己を含む状況全体を相対化する契機を, 鶴見がどのように確保したのかを明らかにすることである. 彼の「方法としてのアナキズム」に基づき, 生活綴方論以降の彼の作文論で, 当初の想定と現実との齟齬への注目が重視されること, そして, 齟齬と対峙する人間の力を「想像力」に帰したことを明らかにする. さらに, 想像力が繰り返し立ち返る場となるように, 鶴見が提出した経験を書く際の基準について, 後年展開された彼の文章論を踏まえて論じる.

言及状況

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最近考えている「期待の次元・回顧の次元」についてこの論文に書いてあるのを思い出して再読。良い/悪い記憶の編集の基準、原体験の考察が非常に参考になった。 CiNii 論文 -  作文はなぜ知的独立性の問題になるのか : 鶴見俊輔,生活綴方,想像力 https://t.co/n0cLcU5uMl #CiNii
@ysawat 生活綴り方運動と鶴見さんは私も関心があります。すでにご存知でしたら恐縮ですが谷川嘉浩さんがこの論文で生活綴り方運動に関して論じておられます。 https://t.co/n0cLcTNTnL
鶴見俊輔のソローに対する評価は「方法としてアナキズム」という文章に載ってたと記憶している。下記の谷川嘉浩さんの論文が鶴見俊輔のソロー評価を引用している。 https://t.co/n0cLcTNTnL
『作文はなぜ知的独立性の問題になるのか : 鶴見俊輔,生活綴方,想像力』谷川嘉浩を読了。鶴見の生活綴り方、文章論は想像力で理想を設定し、現実との差を炙り出すためのものという指摘がおもしろい。鶴見の思想の変遷を分析した論文はあまり見たことないので新鮮だった。 https://t.co/n0cLcTNTnL

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