著者
泉 利明
出版者
千葉大学国際教養学部
雑誌
千葉大学国際教養学研究 = Chiba University journal of liberal arts and sciences (ISSN:24326291)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-17, 2019-03

[要旨] バルザックの小説の文体については、出版当初より、多くの批評家から悪文だと非難されてきた。しかし、フランスの社会状況は古典主義的な言語美学が支配していた時代から大きく変化した。とりわけバルザックのような写実的な小説という文学形式においては、「正しく美しいフランス語」ではない語彙も数多く導入される。本論では、そうした語彙の多様性の意味を、まず、言葉に含まれる時間性という観点から分析し、古語や新語の利用がどのような意図よってなされているかを探る。続いて、空間的に見たときの言語の相違や、職業あるいは階層ごとに特徴的な語彙の使用に着目し、俗語や隠語の効果について検討する。最後に、登場人物間での言語的交流が行われてる箇所を取り上げ、規範にそぐわない語彙の使用が小説の中で生み出している効果について論じる。

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"「…新語を作ると言って非難する人々は、かつてラシーヌに対しても同様の批判があったことを忘れている。今ではラシーヌこそが、…最も調和が取れ、優雅で、純粋だとみなされているのだが」" →S・メルシエ

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