著者
石坂 尚武
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.p585-612, 1985-07

個人情報保護のため削除部分あり十五世紀のフィレンツェの人文主義に対して、「市民的人文主義」という歴史概念をもって分析を展開したバロンのルネサンス史学は、一定評価されている。彼は、十四世紀の人文主義から十五世紀のそれへの移行を、中世的なものから近代的なものへの発展として捉え、サルターティはそこで過渡的役割を果したとされる。すなわちサルターティは、市民的、共和主義的立場を明言して十五世紀の新しい人文主義を示唆するところがあったが、結局、晩年における借主の台頭の中で、宗教的、君主主義的な十四世紀の人文主義に回帰したとされる。このバロンの判断は『僭主論』の解釈による。しかしその解釈は、文献の客観的読解、著作の書かれた背景の認識、そして人文主義的著作へのアプローチにおいて疑問が残る。特に人文主義者における修辞学的志向に配慮すべきである。『僭主論』の解釈に問題がある以上、それを前提とした彼のサルターティ観、「市民的人文主義」も再検討されるべきであろう。

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