著者
上垣 豊
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.p612-648, 1995-07

最近の研究によれば、一九世紀もなお、フランス貴族は財産を保持し、根強い社会的な影響力を維持し、革命後の社会にも適応能力を示したとされる。本稿ではこのような研究動向を踏まえつつ、一九世紀における貴族と国家の関係を論じた。そのなかでも七月革命による貴族制度の実質的解体に注目し、近世貴族制の特徴である「公式のエリート」としての貴族の属性がこれ以後失われることを強調した。また帝政と復古王政の「新旧エリート」の融合政策は旧貴族内部で進んでいた統合の動きと矛盾していたことを明らかにし、さらに七月革命後顕著となる「偽貴族」現象を貴族の国家からの自立との関連で論じた。ただし、名門、あるいは富裕な貴族は立身出世し、国家の要職につくことを望み、富裕でない貴族に関しては副収入源として官職に頼らざるをえなかった。貴族の近代国家への統合はむしろこうした形で進んだのであろう。

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