著者
佐久間 大介
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.350-383, 2002-05

個人情報保護のため削除部分あり国家統合が本格化した一八世紀後半のハプスブルク帝国では、領邦を基盤とした地域主義、すなわち「愛邦主義」が出現する。本稿では、ドイツ語系住民が多数を占めながらも少数派としてイタリア語系住民が存在していたティロール伯領をとりあげ、この「愛邦主義」について考察した。ティロールの「愛邦主義」は、中央集権化を推進する国家官僚機構や、イタリア語住民が居住するヴェルシュ地域、そして宗教・教育への国家介入などを「他者」とする中で形成される。ただし、「愛邦主義」の根拠となったのは「民族」ではなく、領邦と君主との契約の総体である「国法」であった。ヴェルシュ地域との関係は、ワイン利害に代表される具体的な利害関係に規定されており、ヴェルシュ地域が国制から排除されたのも、「国法」に基づく地域的自治の伝統が根拠とされている。また、「ドイツ」やハプスブルク帝国とのつながりは否定される一方、「国法」を保証する存在としてのハプスブルク君主には忠実であることが強調された。このティロールの事例が示すように、ハプスブルク帝国の国家統合においては、「国法」を論拠とした各領邦の自立性の主張が常に問題となっていた。

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