- 著者
-
山下 好孝
- 出版者
- 北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部
- 雑誌
- 日本語・国際教育研究紀要
- 巻号頁・発行日
- no.22, pp.77-86, 2019-03
日本語教育ではいわゆる辞書形(終止形)から様々な動詞活用形が作られる。日本語教員によっては辞書形からではなく「マス形(連用形)」から変化形を作るように指導している人もいるが、これは誤りである。なぜかというと「アクセント(強勢)」まで含めて正しく指導するにはマス形から他の動詞形を導くことは不可能だからである。日本語の標準語における辞書形から他の動詞形へのアクセント規則は概ね次の表のようにまとめることが出来る。表の「無核類動詞」とは動詞辞書形(終止形)にアクセントのないものを指す。「有核類動詞」とは辞書形でアクセントを持つものを指す。数字の「0」はアクセントのないことを示し、「02.03」はそれぞれ語末から2番目、3番目の拍にアクセントがあることを示す。逆に言うと、辞書形と動詞のグループ(五段動詞、一段動詞、変格動詞)さえ分かれば、アクセントを含めた動詞形が正しく導き出せるということである。では日本語の有力な方言である関西弁に関してはどうであろうか。実は、関西弁には標準語には見られない特性があり、標準語の場合のように単純に動詞形を導くことは出来ない。本稿はこの関西弁の動詞変化形のうち、過去を表す「タ形」生成の規則を記述することを目的とする。