著者
山下 好孝
出版者
北海道大学留学生センター = Hokkaido University International Student Center
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-14, 1999-12

日本語の原因・理由を表す表現「から」「ので」「て」について、日本語教育の観点から考察を行う。まず「から」「ので」に関し、先行研究の成果を概観する。従来主張されてきた「主観的判断」「客観的判断」という規準を捨て、別の規準でこれらの表現を扱うべきことを主張する。次に原因・理由を表す「テ形」接続文に焦点を当てる。先行研究を概観し、問題点を抽出する。「テ形」接続文の前件と後件を形成するそれぞれの述語の特性を明らかにする。原因・理由を表す「テ形」接続文の前件には動作性の低い述語が生起すること、及び、後件には感情表現の述語が生起することを主張する。それに伴い、従来、原因・理由の「テ形」接続文とされていたもののいくつかを再検討し、順次動作のテ形文に分類することを提案する。また、この表現に関連して行ったアンケート結果を示し、議論の妥当性を裏付ける。
著者
山下 好孝
出版者
北海道大学留学生センター = Hokkaido University International Student Center
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.11, pp.76-89, 2008-03

現在、日本語教育の発音指導には拍を基本としたものが多い。しかしながらこの拍の感覚を外国人学習者が身につけるにはかなりの困難をともなう。そこで、発音指導で拍ではなくリズム単位(フット)を導入することを試みた。さらに、動詞の発音指導にさいし、フットの区切りを従来の語頭からではなく語末からカウントすることを試みた。以上のような工夫を通じて、学生のパフォーマンスに向上が見られた。動詞の辞書形、ナイ形、テ形などでアクセントのルールが統一できたため、学生の自立的な発音学習に寄与できた。
著者
山下 好孝
出版者
北海道大学留学生センター = Hokkaido University International Student Center
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-13, 2004-12

本稿は、日本語教育におけるテンスとアスペクトの導入で、これまで留意されなかった点を指摘する。動詞「た」形にはテンスとアスペクトの両方の機能が認められる。それが疑問文に用いられ、答えの文で否定形が現れる際、テンスとしての「過去」、アスペクトしての「完了」の解釈が顕在化する。従来は過去の一時点を示す時の副詞と共起する場合、および当該事態が過ぎ去ったこととして解釈される場合は、過去否定形「~なかった・~ませんでした」が使われるとされてきた。しかし、二人の外国人の日本語学習者がそれに対して疑問を呈した。過去を示す副詞と共起する場合でも、これらの形式が使われず、「~ていません・~てないです」というような形式が否定の答えに現れると報告している。上記の報告をデータとして、「過去否定形」が生起する条件を考祭した。そして話し手と聞き手の間に「過去の場の共有」が存在することが、過去形の生起の引き金になると結論づけた。The Japanese TA form has two functions: marking tense and aspect. When the TA form appears with past time adverbs, it implies past tense. On the other hand, when it appears with aspectual adverbs like MOU or MADA, it implies aspectual meanings. 1) Kinou Otaru-ni itta. 2) Mou Otaru-ni itta. The negative forms of tense marking TA and aspect marking TA are said to be NAKATTA and -TE INAI respectively. 3) Kinou Otaru-ni ikanakatta. 4) Mada Otaru-ni itteinai. But two foreign graduate students at Hokkaido University reported that this rule is often invalid in daily conversation: 5) Kinou osake-wo nomimashita-ka? 6) lie, ? nomimasendeshita / nondeimasen / ?? nomanakattadesu. / nondenaidesu. In this article I propose one condition on the appropriate use of the NAKATTA / MASENDESHITA forms, and conclude that these forms are possible only when a past context is shared by both the speaker and the hearer in the conversation. I also mentioned the correlation between the past context and the A series demonstratives, which imply shared knowledge between the speaker and the heaer. Finally I comment on the appearance of the NODA construction in past tense sentences.
著者
山下 好孝
出版者
北海道大学留学生センター = Hokkaido University International Student Center
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.9, pp.79-90, 2005-12

In this brief report, I will present three rules that decide where the accent falls in Japanese compound words. First I will distinguish three types of compound word depending on how many moras the second part of the word includes.: Those that have more than five moras in their second part, those that have three or four moras, and those that have one or two moras. These rules are useful for foreign learners in mastering the Japanese accent. Finally I insist on introducing accent exercises in Japanese teaching.
著者
山下 好孝
出版者
北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部
雑誌
日本語・国際教育研究紀要
巻号頁・発行日
no.22, pp.77-86, 2019-03

日本語教育ではいわゆる辞書形(終止形)から様々な動詞活用形が作られる。日本語教員によっては辞書形からではなく「マス形(連用形)」から変化形を作るように指導している人もいるが、これは誤りである。なぜかというと「アクセント(強勢)」まで含めて正しく指導するにはマス形から他の動詞形を導くことは不可能だからである。日本語の標準語における辞書形から他の動詞形へのアクセント規則は概ね次の表のようにまとめることが出来る。表の「無核類動詞」とは動詞辞書形(終止形)にアクセントのないものを指す。「有核類動詞」とは辞書形でアクセントを持つものを指す。数字の「0」はアクセントのないことを示し、「02.03」はそれぞれ語末から2番目、3番目の拍にアクセントがあることを示す。逆に言うと、辞書形と動詞のグループ(五段動詞、一段動詞、変格動詞)さえ分かれば、アクセントを含めた動詞形が正しく導き出せるということである。では日本語の有力な方言である関西弁に関してはどうであろうか。実は、関西弁には標準語には見られない特性があり、標準語の場合のように単純に動詞形を導くことは出来ない。本稿はこの関西弁の動詞変化形のうち、過去を表す「タ形」生成の規則を記述することを目的とする。
著者
山下 好孝
出版者
北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部
雑誌
日本語・国際教育研究紀要
巻号頁・発行日
vol.22, pp.77-86, 2019-03

日本語教育ではいわゆる辞書形(終止形)から様々な動詞活用形が作られる。日本語教員によっては辞書形からではなく「マス形(連用形)」から変化形を作るように指導している人もいるが、これは誤りである。なぜかというと「アクセント(強勢)」まで含めて正しく指導するにはマス形から他の動詞形を導くことは不可能だからである。日本語の標準語における辞書形から他の動詞形へのアクセント規則は概ね次の表のようにまとめることが出来る。表の「無核類動詞」とは動詞辞書形(終止形)にアクセントのないものを指す。「有核類動詞」とは辞書形でアクセントを持つものを指す。数字の「0」はアクセントのないことを示し、「02.03」はそれぞれ語末から2番目、3番目の拍にアクセントがあることを示す。逆に言うと、辞書形と動詞のグループ(五段動詞、一段動詞、変格動詞)さえ分かれば、アクセントを含めた動詞形が正しく導き出せるということである。では日本語の有力な方言である関西弁に関してはどうであろうか。実は、関西弁には標準語には見られない特性があり、標準語の場合のように単純に動詞形を導くことは出来ない。本稿はこの関西弁の動詞変化形のうち、過去を表す「タ形」生成の規則を記述することを目的とする。
著者
山下 好孝
出版者
北海道大学留学生センター = Hokkaido University International Student Center
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-13, 2004-12

本稿は、日本語教育におけるテンスとアスペクトの導入で、これまで留意されなかった点を指摘する。動詞「た」形にはテンスとアスペクトの両方の機能が認められる。それが疑問文に用いられ、答えの文で否定形が現れる際、テンスとしての「過去」、アスペクトしての「完了」の解釈が顕在化する。従来は過去の一時点を示す時の副詞と共起する場合、および当該事態が過ぎ去ったこととして解釈される場合は、過去否定形「~なかった・~ませんでした」が使われるとされてきた。しかし、二人の外国人の日本語学習者がそれに対して疑問を呈した。過去を示す副詞と共起する場合でも、これらの形式が使われず、「~ていません・~てないです」というような形式が否定の答えに現れると報告している。上記の報告をデータとして、「過去否定形」が生起する条件を考祭した。そして話し手と聞き手の間に「過去の場の共有」が存在することが、過去形の生起の引き金になると結論づけた。