著者
小林 由子
出版者
北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部
雑誌
日本語・国際教育研究紀要
巻号頁・発行日
vol.22, pp.28-45, 2019-03

小河原(2016)で紹介されているように、北海道大学旧留学生センター(現高等教育推進機構国際教育研究部)では、2013年度から、一般日本語の中上級レベルを大きく組み換え、日本人と留学生が日本語で共に学ぶ「多文化交流科目」を最上級レベルと設定した「北海道大学日本語スタンダーズ」を構築し、「やりとり」「表現」「理解」という3つのモード、中級1・2・3および上級という4レベル構成で日本語での課題遂行能力を養うこととした。一般日本語コースの中上級レベルの対象者は、多様なニーズ・学習歴を持つ。対象者の中には、日本人学生対象の授業を履修し単位を取らなければならない者もおり、そのための高度な日本語能力を保証しなければならない。心理学や第二言語習得研究の知見からは、広く行なわれている言語構造や4技能を中心とする授業よりも課題遂行型授業の方が効果的に日本語の運用能力を養成することができると考えられる。一方、5年間の実践とスタンダーズに関する先行研究から見ると、文法や語彙のような「言語構造能力」の養成について課題は多い。そこで、本稿では、筆者の実践した「中級理解(基礎)3」の授業に基づき、課題遂行型授業における言語構造能力の養成について検討する。
著者
平田 未季
出版者
北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部
雑誌
日本語・国際教育研究紀要
巻号頁・発行日
vol.26, pp.42-65, 2023-03

本稿では、江別市を事例とし、来訪者との国際交流を目的として活動を開始した住民有志による団体が、地域の内なる国際化に目を向け日本語教室を開設するに至るまでの過程と、彼らが教室の運営において抱える課題や思いを、当事者へのインタビュー調査に基づき記述する。インタビューから、当事者が、日本語教育や多文化共生支援は専門家が行うものであり自らが主体的に関われるものではないと認識していること、日本語教室が軌道に乗らない中でかつての国際交流活動こそが多様化する市において必要な活動ではないかと考えていること、しかし、現在の文脈で国際交流を中心とする団体には戻ることは難しいという意識があることが分かった。本稿では、日本語教室が団体にもたらした質的変化についても述べ、地域日本語教室の存在意義について考える。
著者
山本 さやか
出版者
北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部
雑誌
日本語・国際教育研究紀要
巻号頁・発行日
vol.24, pp.84-103, 2021-03

本稿は、中級理解(運用)クラスにおいて、書評ゲーム「ビブリオバトル」をオンライン授業の中で実践した報告である。普段教室で行っている実践をオンライン上で行った結果および今後の課題について明らかにすることを目的としている。今期はオンライン授業でコミュニケーション機会が限られたため、学習者には通常の教室授業時よりさらに「相手の立場に立った発表」をするよう働きかけた。その結果、オンライン上ゆえの限界があるものの、学習者はそれぞれ工夫を凝らし相手の立場にたった発表を行うことができた。またこの活動を通じて日本語で本を読む楽しさを知り、聞き手との深い議論をすることができた。本実践の結果から、オンライン上であってもビブリオバトルは中級日本語学習者にとって総合的な日本語力訓練のための意義ある活動になることが示唆された。
著者
小林 由子
出版者
北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部
雑誌
日本語・国際教育研究紀要
巻号頁・発行日
vol.23, pp.37-57, 2020-03

日本語・日本文化研修留学生制度は、日本国外で日本語・日本文化を専攻する学部学生が原則として1年間日本の大学に留学するものである。2019年現在、全国73大学において大使館推薦国費留学生を中心に受け入れが行われている。北海道大学では、1981年から受け入れが始まり、その後、言語文化部に日本語・日本文化研修コース(本稿では修了要件を備えた一連の科目群を「コース」と称する)が設置された。1991年に留学生センターが設置されて以降、数回の制度改革を経て、2019年現在、1年コース定員40名、半年コース定員各期20名、年間合計定員80名と、日本語・日本文化研修プログラムとしては全国最大の規模の受け入れを行っている。この制度改革には、北海道大学における留学生教育受け入れ制度の変化・協定大学との学生交流強化・カリキュラムおよび履修科目の見直し・内規改訂など様々な側面がある。本稿では、資料にもとづいて北海道大学における日本語・日本文化研修プログラムの変遷と制度改編について詳述し、北海道大学における日本語教育の歴史的変遷、および日本語・日本文化コースの展望について考察する。
著者
山下 好孝
出版者
北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部
雑誌
日本語・国際教育研究紀要
巻号頁・発行日
no.22, pp.77-86, 2019-03

日本語教育ではいわゆる辞書形(終止形)から様々な動詞活用形が作られる。日本語教員によっては辞書形からではなく「マス形(連用形)」から変化形を作るように指導している人もいるが、これは誤りである。なぜかというと「アクセント(強勢)」まで含めて正しく指導するにはマス形から他の動詞形を導くことは不可能だからである。日本語の標準語における辞書形から他の動詞形へのアクセント規則は概ね次の表のようにまとめることが出来る。表の「無核類動詞」とは動詞辞書形(終止形)にアクセントのないものを指す。「有核類動詞」とは辞書形でアクセントを持つものを指す。数字の「0」はアクセントのないことを示し、「02.03」はそれぞれ語末から2番目、3番目の拍にアクセントがあることを示す。逆に言うと、辞書形と動詞のグループ(五段動詞、一段動詞、変格動詞)さえ分かれば、アクセントを含めた動詞形が正しく導き出せるということである。では日本語の有力な方言である関西弁に関してはどうであろうか。実は、関西弁には標準語には見られない特性があり、標準語の場合のように単純に動詞形を導くことは出来ない。本稿はこの関西弁の動詞変化形のうち、過去を表す「タ形」生成の規則を記述することを目的とする。
著者
上原 由美子
出版者
北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部
雑誌
日本語・国際教育研究紀要
巻号頁・発行日
vol.22, pp.9-27, 2019-03

「JF日本語教育スタンダード」(以下、JFスタンダード)1)は、国際交流基金によって2010年より公開されている、日本語教育のコースデザイン、授業設計、評価を考えるための枠組みである。公開から8年を経て、国内外の日本語教育の現場で活用が広まるにつれ、「具体的な活用方法が知りたい」「Can-doや評価など個別の内容についてもっと詳しく知りたい」「現場の課題解決につなげるにはどう使ったらいいか」など、具体的な要望や質問も多く聞かれるようになった。国際交流基金日本語国際センターでは、2018年に、JF スタンダードに関連する3つのウェブサイト(以下、サイト)のリニューアルを行った。リニューアルの目的の一つは、上述のような現場からの声を反映し、JF スタンダードに関する内容を充実させ、よりわかりやすく活用しやすいものとして提供できるようにすることであった。本稿では、はじめにJFスタンダードの概要と、JFスタンダードに関する現場での疑問や課題を紹介し、次にサイトのリニューアルにおける、JFスタンダードの活用促進を目的とした改善策について述べる。最後にJFスタンダードの活用事例として、スペインでの実践の報告を紹介し、そこから得られる示唆について考察する。
著者
山下 好孝
出版者
北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部
雑誌
日本語・国際教育研究紀要
巻号頁・発行日
vol.22, pp.77-86, 2019-03

日本語教育ではいわゆる辞書形(終止形)から様々な動詞活用形が作られる。日本語教員によっては辞書形からではなく「マス形(連用形)」から変化形を作るように指導している人もいるが、これは誤りである。なぜかというと「アクセント(強勢)」まで含めて正しく指導するにはマス形から他の動詞形を導くことは不可能だからである。日本語の標準語における辞書形から他の動詞形へのアクセント規則は概ね次の表のようにまとめることが出来る。表の「無核類動詞」とは動詞辞書形(終止形)にアクセントのないものを指す。「有核類動詞」とは辞書形でアクセントを持つものを指す。数字の「0」はアクセントのないことを示し、「02.03」はそれぞれ語末から2番目、3番目の拍にアクセントがあることを示す。逆に言うと、辞書形と動詞のグループ(五段動詞、一段動詞、変格動詞)さえ分かれば、アクセントを含めた動詞形が正しく導き出せるということである。では日本語の有力な方言である関西弁に関してはどうであろうか。実は、関西弁には標準語には見られない特性があり、標準語の場合のように単純に動詞形を導くことは出来ない。本稿はこの関西弁の動詞変化形のうち、過去を表す「タ形」生成の規則を記述することを目的とする。