- 著者
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富井 幸雄
- 出版者
- 法学新報編集委員会
- 雑誌
- 法学新報 (ISSN:00096296)
- 巻号頁・発行日
- vol.122, no.3, pp.75-181, 2015-08
E・スノーデンが暴露したアメリカ国家安全保障局(NSA)の電子的監視による大量情報収集は、合理的な捜査で、かつ、令状に基づいてのみ私的空間への立ち入りを認めたアメリカ憲法修正第四条に反すると批判されている。諜報は同憲法二条で正当化されるとして歴史的に大統領の専権とされ、そのための電子的監視も行ってきた。本稿は、刑事手続原理を定めた修正第四条が安全保障上の捜査の電視的監視にも適用されるのか、立法は諜報機関の電子的監視にどのような統制の枠組みを設けているのかを考察する。まず、同条がテクノロジーの発展にどう適応していったのかをみる。プライバシーの成熟で刑事司法では電子的監視には厳格な法的制約が課されるようになる。国内の安全保障目的の電子的監視には同条が適用されるとの最高裁判断(Keith 判決)を受けて、立法で外国の諜報は司法的枠組みで認められる(外国諜報監視法(FISA))ようになる。おりから、安全保障では大統領の安全保障権限が考慮され、刑事捜査より低いハードルで執行権に有利に運用される。対テロ対策の強化で国内の諜報が隠密になされるようになっており、その正当性や統制を憲法的にどう考えていくかが論点となっているのである。