- 著者
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藤田 彩見
矢嶋 裕樹
- 雑誌
- 新見公立大学紀要 = The bulletin of Niimi College
- 巻号頁・発行日
- no.39, pp.47-52, 2019
本研究は、幼児をもつ母親を対象に、児の発達に関する専門家への援助要請行動と精神的健康の関連を明らかにすることを目的とした。A市在住の3~6歳の母親を対象に、郵送法による自記式質問紙調査を実施した。回答が得られた88人回収率45.9%)のうち、分析に用いる変数に欠損値のない256人を分析対象とした。児の発達に関する悩みについては、「生活習慣や習癖」が最も多く(31.6%)、次いで「学習や就学に向けての準備」(23.8%)、「動作や言葉の発達」(21.1%)であった。児の発達について専門家に援助要請(相談)したことが「月1回以上ある」と回答した者は16.4%であった。うつ傾向の有無を目的変数とするロジスティック回帰分析の結果、悩みなし群を基準とした場合、悩みあり援助要請低群、悩みあり援助要請高群ともに抑うつ傾向のリスクが高い傾向が示された。以上より、児の発達について悩みがあるにもかかわらず、専門家へ援助要請しない、またはできない母親が一定数存在することが明らかとなった。また、専門家への援助要請は母親の抑うつ低減につながると考えたが、本研究ではそのような関連はみられなかった。因果の逆転等の可能性も否定できず、この点については今後の検討課題としたい。