著者
新藤 慶
出版者
新見公立大学
雑誌
新見公立大学紀要 = The bulletin of Niimi College (ISSN:21858489)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.103-115, 2010

本研究は,地域社会研究会の発足時に興隆しはじめた住民運動論の展開を振り返ることで,その方法的な見直しが迫られている地域社会学の課題と克服の方途について考察することを目的とする。その第一報として,ここでは1970年代後半~1990年代の住民運動論の検討を中心とする。ここで指摘したことは,以下の諸点である。 第1に,住民運動論を振り返るうえでは,問題設定の変遷と,研究から切り出した住民運動の様相の変遷を明らかにすることが重要である。第2に,この時期の住民運動論では,住民運動に肯定的な姿勢が主流であるが,否定的な姿勢を持つものも見られた。第3に,住民運動の発生に関わる生成過程の分析は豊富だが,運動生成後の展開過程の分析は不十分であった。第4に,さまざまな地域の多様な住民運動を扱いながら,基本的な方法論は共通していた。 I tried to clarify the trends and the problems in sociology of region by analyzing of studies of residential movements. As a result, the following points became clear. First, it is important to notice the transitions of problem and the aspects of movements for analyzing of studies of residential movements. Second, there are two types of study ── positive movement studies and negative movement studies. Third, analyses of formation are sufficient, but analyses of change are insufficient. Fourth, these studies have common method.
著者
百田 由希子 平田 知子 三好 年江
出版者
新見公立大学 ; 2010-
雑誌
新見公立大学紀要 = The bulletin of Niimi College (ISSN:21858489)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.153-156, 2020

親子のふれあいや、妊娠期からの積極的な育児支援へつなげることを目的に「親子のふれあい遊び」「プレママさん、プレパパさん大集合」と題し、子育て中の親子や妊婦やその家族を対象に企画を開催した。「親子のふれあい遊び」では、ベビーマッサージを実施し、その後、座談会として日々の育児不安や悩みについて、お母さん同士、意見交換を行った。また、「プレママさん、プレパパさん大集合」では、バースプランや育児プランを語ってもらい、これから迎える出産に対して気持ちの整理を行った。その後、親子交流広場に移動して、広場に常駐する子育て支援者(以下スタッフ)から育児支援の情報提供をしてもらったり、実際の子どもや保護者と関わる時間を設けたりした。参加者の感想として、「気分転換になった」「赤ちゃんの人形を抱っこしてみて少し不安が解消された」といった意見を聞けた。
著者
原田 信之
雑誌
新見公立大学紀要 = The bulletin of Niimi College
巻号頁・発行日
vol.38-1, pp.1-12, 2017

玄賓(七三四~八一八)は南都法相宗興福寺の高僧であったが、備中国(岡山県)や伯耆国(鳥取県)など、隠遁した地で寺院を建立していたことが知られている。伯耆国に関するものでは、『日本三代実録』に伯耆国会見郡で阿弥陀寺を建立したことが記されているが、その場所がどこであったのかは未だにわかっていない。玄賓が伯耆国会見郡に建立した阿弥陀寺の場所については、これまでに伯耆大山建立説と伯耆賀祥建立説が提示されてきた。寛保二年(一七四二)成立の『伯耆民諺記』、安政五年(一八五八)編纂の『伯耆志』会見郡分などの地誌類に加え、地域に伝わっている文献や伝承を調査した結果、玄賓が伯耆国会見郡に建立した阿弥陀寺の場所は、伯耆賀祥(鳥取県南部町賀祥)であった可能性が極めて高いことがわかった。伯耆大山には玄賓の伝承は伝わっていないが、伯耆賀祥には玄賓が豊寧寺(伯耆三十三札所第三番。法寧寺、保寧寺、宝念寺とも。阿弥陀寺があった地とされる)と白山権現を草創したとの伝承があり、その地には「あみだいじ」という地名が残っている。
著者
八尋 茂樹
出版者
新見公立大学 ; 2010-
雑誌
新見公立大学紀要 = The bulletin of Niimi College (ISSN:21858489)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.119-123, 2018

本稿では、まず発達障害の非行の関係性の研究や発達障害を有する非行少年の再犯防止策に関する先行研究を踏まえ、その後、発達障害を有する少年の少年院出院後の社会復帰に向けた福祉的支援への取り組みの研究の動向の把握を試みた。多くの先行研究では、発達障害を有する少年の少年院出院後の社会復帰支援に関する研究論文は非常に少なく、発達障害と非行との関係性や、少年院等での処遇について論じた後に、課題や展望として出院後の対処について触れられるケースが多かった。非行少年の更生に向けての処遇には、少年刑務所や医療少年刑務所等が存在し、また、社会的に養護されるのは児童家庭福祉的な分野において児童養護施設や児童自立支援施設等が存在する。これらの施設に入所した少年たちのうち、発達障害を有する非行少年を対象としたまとまった調査はほとんど行われておらず、今後、本稿で採り上げた動向と並行しながらそれらが掘り下げられていくことが、発達障害を有する非行少年への適切な処遇のあり方の全体像や方向性を明確にするための貢献となるであろう。
著者
藤田 彩見 矢嶋 裕樹
雑誌
新見公立大学紀要 = The bulletin of Niimi College
巻号頁・発行日
no.39, pp.47-52, 2019

本研究は、幼児をもつ母親を対象に、児の発達に関する専門家への援助要請行動と精神的健康の関連を明らかにすることを目的とした。A市在住の3~6歳の母親を対象に、郵送法による自記式質問紙調査を実施した。回答が得られた88人回収率45.9%)のうち、分析に用いる変数に欠損値のない256人を分析対象とした。児の発達に関する悩みについては、「生活習慣や習癖」が最も多く(31.6%)、次いで「学習や就学に向けての準備」(23.8%)、「動作や言葉の発達」(21.1%)であった。児の発達について専門家に援助要請(相談)したことが「月1回以上ある」と回答した者は16.4%であった。うつ傾向の有無を目的変数とするロジスティック回帰分析の結果、悩みなし群を基準とした場合、悩みあり援助要請低群、悩みあり援助要請高群ともに抑うつ傾向のリスクが高い傾向が示された。以上より、児の発達について悩みがあるにもかかわらず、専門家へ援助要請しない、またはできない母親が一定数存在することが明らかとなった。また、専門家への援助要請は母親の抑うつ低減につながると考えたが、本研究ではそのような関連はみられなかった。因果の逆転等の可能性も否定できず、この点については今後の検討課題としたい。
著者
矢嶋 裕樹 矢庭 さゆり
出版者
新見公立大学 ; 2010-
雑誌
新見公立大学紀要 = The bulletin of Niimi College (ISSN:21858489)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.27-33, 2018

本研究は、中山間地域の高齢者を対象に、被援助志向性の実態とその社会的要因を明らかにすることを目的とした。2017年5月下旬に、新見市選挙人名簿より1/10の確率で無作為抽出された高齢者1,182名を対象に、郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した。調査内容は、高齢者の基本属性と被援助志向性に加え、外出頻度(閉じこもり傾向)、社会的交流(サポート授受)、悩みの深刻度とした。回答が得られた731名(回収率61.8%)のうち、各項目に欠損値のない485名を分析対象とした。一般線形モデルの結果、被援助志向性と有意な関連がみられたのは、性別、世帯構成、閉じこもり傾向、サポート受領であった。男性、独居、閉じこもり傾向がある、サポート授受の機会が少ないほど、被援助志向性が低い傾向にあった。以上の結果は、高齢者の社会参加を促進するサロン事業等の取組みが、高齢者の孤立化防止のみならず、被援助志向性や援助要請の向上・促進にも寄与しうることを示唆するものである。The purpose of the study was to examine help-seeking preference and its social correlates among older adults living in amountainous area, Japan. Self-administered questionnaires were mailed to 1,182 randomly selected older adults aged 65 and older inNiimi city, Okayama prefecture, Japan. The questionnaire included the Help-Seeking Preference Questionnaire as well as itemsassessing social correlates such as household type, homebound status, and social reciprocity. Of 731 (61.8% correct responses) whocompleted and returned the questionnaire, 485 older persons without missing data were analyzed. A series of general linear modeling(GLM) results showed that help-seeking preference had significant associations with gender and with household type, homeboundstatus, and social reciprocity after adjusting for confounding factors such as age, gender, self-rated health, and level of psychologicaldistress. Those who were male, living alone, homebound and did not interact with others had lower preference to seek help. Thesefindings suggest that interventions to promote social participation of older adults (e.g. community salon) could increase their preferencefor seeking help, as well as preventing social isolation and loneliness.
著者
藤田 彩見 矢嶋 裕樹 二宮 一枝
出版者
新見公立大学 ; 2010-
雑誌
新見公立大学紀要 = The bulletin of Niimi College (ISSN:21858489)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.41-46, 2018

本研究は、発達障害児の母親を対象に療育機関の専門家に対する援助要請行動の実態を明らかにすることを目的とした。A県の児童発達支援事業および福祉型児童発達支援センター24施設を利用する児の母親549人を対象に無記名自記式質問紙調査を行った。回収票196部(回収率35.7%)のうち、分析に用いるデータに欠損がなく、発達障害に関する診断名以外のものを除外した144人のデータを分析に用いた。子育てについて悩みが「ある」と回答した者のうち、療育機関の専門家に対して援助要請することが「まったくなかった」「ほとんどなかった」「あまりなかった」と回答した者は44人(32.6%)であった。育児ストレスの高低と援助要請頻度の高低とを掛け合わせた結果、育児ストレスが高いが、援助要請頻度が低い群は16人(11.9%, 95%信頼区間=6.4-17.4)であった。発達障害児の母親の精神的健康の悪化を予防するため、母親が適切な援助要請行動をとれるように相談支援体制の充実を図る必要性が示唆された。The purpose of this study was to examine mother's professional help-seeking regarding their child's developmental problems. Ananonymous self-administered questionnaire was given to a convenience sample of 549 mothers of children with developmentaldisabilities who were users of 24 child development support centers, in A prefecture, Japan. Finally, 196 returned a completedquestionnaire (correct rate: 35.7%) and data of 144 mothers were analyzed. The results showed more than half of the mothers reportedhigh intensity of parenting stress. Furthermore, about 10% of these mothers were reluctant to seek professional help for parentingconcerns and their child's developmental problems. These findings suggest the necessity of improving consultant and support systemfor mothers and their child, to increase professional help-seeking and prevent mothers' mental disorders.
著者
松本 百合美 合田 衣里
雑誌
新見公立大学紀要 = The bulletin of Niimi College
巻号頁・発行日
vol.35, pp.43-48, 2014

近年,介護福祉の現場ではアクティビティケア(以下AC)という言葉が盛んに使用されるようになった。 本学においても,ACの学習に取り組ませ介護実習等で実践できるよう教育を行っている。そこで,本研究で はACの学習を終えた2年次の介護実習(4週間)等におけるAC実践に関する学生のレポートを分析し,AC教 育の効果と課題の知見を得ることを目的とした。その結果,学生はゲームなどのいわゆるレクリエーション 活動(以下,RA)に留まらないACを捉え,日常の介護や声かけの中にもACを意識していることが分かった。 一方,実践の内容では,圧倒的にRAが多く,実践力の乏しさが推察できた。また,効果の評価としては,利 用者の表情や発言等から捉えることができていたが,日常生活の変化を捉えたものは少なかった。今後,介 護福祉現場でACに取り組める力をつけていくために,RAの実践力をつけていくと同時に,ACの評価につい ても検討していく必要が示唆された。