- 著者
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濱野 千尋
- 出版者
- 京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野
- 雑誌
- コンタクト・ゾーン (ISSN:21885974)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.2019, pp.62-94, 2019-08-31
本論文の目的は、ドイツにおける動物性愛者への調査に基づいて、動物性愛というセクシュアリティがもたらす、人間と動物のセックスを含めた種間関係のあり方を考察するものである。その際に本論文で焦点を当てるのは、動物性愛を意図的に選択し、自ら動物性愛者になっていく人々である。このような人々の存在について、これまで他領域を含む先行研究では言及されてこなかった。動物性愛というセクシュアリティを選び取る人々について学術的な言説のなかで言及するのは本論文が初めてである。本論文では彼らの実態を紹介し、事例を踏まえてダナ・ハラウェイによる伴侶種概念と比較検討しつつ、伴侶種を論じる際のセクシュアリティに対する視点の必要性を指摘する。動物性愛を選択する人々がいる事実は、動物性愛というセクシュアリティを生来的なものではなく、身近な動物との共生のためのオルタナティブな方法として受け入れうるものと説明できる可能性がある。本論文では、このような人々の事例をもとに、セクシュアリティの選択と、その結果としてもたらされる、異種間関係および人間関係の変容について論じる。