- 著者
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今村 篤史
- 出版者
- 松本大学地域総合研究センター
- 雑誌
- 地域総合研究
- 巻号頁・発行日
- no.20, pp.27-56, 2019-07-31
生活保護法の目的は国民の最低生活保障と自立助長にある。そのなかにおいて、保護の補足性のひとつである私的扶養の優先は、いわゆる水際作戦の道具として古くから議論されてきた。本研究では、この私的扶養の優先について、保護の実施機関をコントロールする「生活保護法施行事務監査」における扶養義務に関する事項の変遷を辿ることによって、生活保護行政における扶養義務への姿勢を分析した。結果、そこでは扶養義務の履行指導と保護開始時の調査徹底を求めてきたことがわかった。このことから、生活保護行政における扶養は、法本来の目的を目指したものではなく、現在も要保護者の前に立ちはだかるものとしてあることが明らかとなった。