著者
今村 篤史
出版者
松本大学地域総合研究センター
雑誌
地域総合研究
巻号頁・発行日
no.20, pp.27-56, 2019-07-31

生活保護法の目的は国民の最低生活保障と自立助長にある。そのなかにおいて、保護の補足性のひとつである私的扶養の優先は、いわゆる水際作戦の道具として古くから議論されてきた。本研究では、この私的扶養の優先について、保護の実施機関をコントロールする「生活保護法施行事務監査」における扶養義務に関する事項の変遷を辿ることによって、生活保護行政における扶養義務への姿勢を分析した。結果、そこでは扶養義務の履行指導と保護開始時の調査徹底を求めてきたことがわかった。このことから、生活保護行政における扶養は、法本来の目的を目指したものではなく、現在も要保護者の前に立ちはだかるものとしてあることが明らかとなった。
著者
今村 篤史
出版者
松本大学地域総合研究センター
雑誌
地域総合研究
巻号頁・発行日
no.22(Part1), pp.45-69, 2021-07-31

ひとり親家庭への支援は、いわゆる2002年改革によって経済的自立を要請する就労支援を基軸とした政策を展開している。しかし、そうした就労支援については多くの問題が指摘されている。そのような中にあって、今般のコロナ禍においてはひとり親家庭の生活困窮に注目が集まり、政府はひとり親家庭に対し「ひとり親世帯臨時特別給付金」の支給を実施した。本研究では、コロナ禍というこれまで以上にひとり親家庭の生活困難が浮き彫りにされた状況において、この「ひとり親世帯臨時特別給付金」を中心としたひとり親家庭支援をめぐる国会審議を分析することで、現在のひとり親家庭支援における政策のベクトルを明らかにすることを目的とする。
著者
山﨑 保寿
出版者
松本大学地域総合研究センター
雑誌
地域総合研究
巻号頁・発行日
no.21(Part1), pp.85-94, 2020-07-31

大学は7年以内毎に、文部科学大臣が認証する評価機関の評価を受ける。認証評価等の外部評価において、実地調査で行われる説明会議では、学外者が大学の現状や組織運営等に関して、評価者として質問するのであるが、その場合、被評価者である大学側が回答するに際して、評価者と被評価者の関係に由来する独特の問題が生じる。本研究では、こうした問題の構造について考察し、その構造に起因する質問と回答のすれ違いの例を示した。さらに、より妥当性の高い外部評価に結び付けるために、外部評価委員の質問に対する適切な回答の原則として、全員の原則、共有の原則、継続の原則を示し、認証評価に対する組織的対応の重要性を明らかにした。
著者
濱田 敦志
出版者
松本大学地域総合研究センター
雑誌
地域総合研究
巻号頁・発行日
no.23(Part1), pp.93-100, 2022-07-31

体育授業のリズムダンスは、恥ずかしさが大きな原因で曲調に合わせて自由にノリを楽しむことができない。恥ずかしさの一番の原因は、他者の視線であり、見られている身体を意識することによりノレない、踊れない状態になると考えられる。体育館を暗くして他者からの視線を軽減すると学習者の身体はどのように変容するだろうか。また、ミラーボールを使って非日常を演出すると学習者の身体はどのように変容するだろうか。体育館を暗くしただけでもノリやすい環境になることが分かったとともに、ミラーボールを使って非日常を演出することで、さらにノリやすい環境を提供することができることが明らかになった。
著者
中山 文子
出版者
松本大学地域総合研究センター
雑誌
地域総合研究
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.63-72, 2016-07

本研究の目的は乳幼児育児中の母親の置かれている現状を明らかにし、求められている支援を探ることである。対象者は塩尻市乳幼児健診(4ヶ月、10ヶ月、1歳半)を受診した母親合計99名であった。育児に関する生活実態と現在の気分(POMS)についてアンケート調査を行った結果、「趣味を楽しめている人」と「仲間がいる人」は気持ちが安定している傾向があった。また「子どもの特徴に不安を感じている」場合に「疲れ」や「混乱」が高いことが明らかとなった。求めている支援については約半数の人が「専門家との相談」や「家事育児のサポート」を希望しているが利用に結びついていない実態、また半数以上の人が気軽に話ができる仲間がほしいと思っていることが明らかとなった。
著者
眞次 宏典
出版者
松本大学地域総合研究センター
雑誌
地域総合研究
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.97-103, 2016-07

平成28年(2016年)1月よりマイナンバーの利用と交付が始まった。本報告書は、国民の間で関心の高いマイナンバー制度について、平成28年3月11日に松本市松原公民館で行った住民研修「マイナンバーの問題点」での講演をまとめたものである。ここではマイナンバー制度の導入の背景、制度の概略を説明した上で、プライバシーや個人情報保護、さらにはマイナンバーカードに関連する犯罪の可能性等を解説した。そして、それがプライバシーの概念を変容させる効果をもたらすことを指摘した。