著者
平野 芳信
出版者
佛教大学国語国文学会
雑誌
京都語文 (ISSN:13424254)
巻号頁・発行日
no.27, pp.50-66, 2019-11-30

村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』で、語り手が多大な影響を受けたアメリカ人作家デレク・ハートフィールドは、周知のごとく、実在の作家ではない。一応、「ロバート・E・ハワード」と「ハワード・P・ラヴクラフト」、さらには「ヴォネガット」等々の作家像を混交したものという定説があるが、本稿は、この定説に一石を投じるものである。すなわち、かつてアメリカ進駐軍に接収されていた明治神宮球場で、アメリカ人選手が放ったヒットの快音を耳にして、小説を書こうと思いつきながら、どうしてもうまく小説が書けなかった春樹が、まず英語で書いてみて、それを日本語に翻訳することではじめて『風の歌を聴け』を書き上げることができたという、作者自身何度も述懐しているエピソードに留意した。さらには、それまでの禁を破るかのように身内について多くの情報をさらけ出したことで話題になった「文藝春秋」に発表されたエッセイ「猫を棄てる」において、春樹の祖父が「村上弁識」という僧侶であったことに着目し、「弁識」氏が「ハートフィールド」氏のもうひとりのモデルであった可能性を提案するものである。

言及状況

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「そもそも「ハートフィールド」という人名は英語圏では存在しない。それは「Hertfield」でも「Hartfield」でも事情は同じである」→John Hartfieldって人いるけど… https://t.co/90gYvIWr6G 論文 -  デレク・ハートフィールド考 https://t.co/kJoR5AXzz7

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