著者
中島 巖
出版者
専修大学経済学会
雑誌
専修経済学論集 = Economic bulletin of the Senshu University (ISSN:03864383)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.61-86, 2014-11

民間からの実物資源の買上げを企図した貨幣の発行, すなわち貨幣創造がもたらす収益差は創造益(seigniorage)と呼ばれる。 伝統的理論において, 創造益の最適水準を問う際の最適性は, Phelps の資本蓄積の黄金律のそれに形式的類似性をもつ。すなわち, 貨幣当局が完全予見定常均衡で測った費用, 便益に基づき貨幣供給成長率を選ぶものである。 これに対し, Friedman は, 期待インフレ率を政策変数として創造益の最大化を図る目標を提示した。 さらに, Calvo は, その最大化に際して創造益の割引現在価値を対象値とした。 他方, Romer は, 貨幣創造はハイパー・インフレーションとの相互関係の中で捉えるべきであるとし, 創造益の最大化から導かれる貨幣成長率と創造益の間のLaffer 曲線に対し, Cagan の提示するハイパー・インフレーション時の貨幣需要函数を適用し, 貨幣創造がハイパー・インフレーションの無条件的発生要因ではないことを主張した。しかるに, 貨幣需要に確率過程にしたがう確率変数が作用するとき, Laffer 曲線は, 右上方に, あるいは, 左下方にシフトする可能性が確かめられ, とりわけ, 前者の場合においては, 通貨当局が創造益追求を拡大し得る余地が増し, それに伴ってハイパー・インフレーションが昂進する可能性の増大化が帰結される。また, 貨幣需要の構成要因である名目利子率と実物産出量の固定化の制約が緩められ, 後者の変動が許されるところで, 貨幣創造がハイパー・インフレーションを昂進させ得る情況が満たすべき条件が導かれる。

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