- 著者
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田中 裕
- 出版者
- 史学研究会 (京都大学文学部内)
- 雑誌
- 史林 = THE SHIRIN or the JOURNAL OF HISTORY (ISSN:03869369)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.6, pp.484-502, 1955-11-01
封建制度成立期の研究において、旧来兎もすれば、上部構造と下部構造とを夫々別箇に、切り離して取扱う嫌いがあつた。従ってレーエン制と農奴制とは、法制史研究と経済史研究という個々別々の研究分野に、跼蹐せしめられ勝ちであつた。然し乍らこれらは、互に切り離して扱うことを許さない、重要な一面をもつている。いわば両者は相互に、社会史を交渉の「場」としているのである。ここで「共同体」をその主要テーマとし、家父長的家共同体から秘密共同体、更に土地共同体への変貌過程を考察し、封建制度成立期の社会変革を示さうと試みたのである。「共同体」の段階的発展がこれであつて、この運動を媒介として、レーエン制と農奴制との結合が、美事に構築される。その担い手こそ土豪領主であり、彼等こそこの劃期における「村作り」の運動を、主体的に推進したのである。本稿の意図は、その過程の分析にある。