著者
木村 義成
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 = The Journal of history (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.215-241, 2020-01

患者の受入先医療機関が速やかに決定しない救急事案(救急搬送困難事案)が全国的に報告され社会問題となっている。本稿では、大阪市内で搬送困難が報告されている消化管出血患者の搬送特性について、その地域差を明らかにし、患者の円滑な救急搬送にむけた対応策を検討した。分析手法として、搬送特性の地域差を検討するために「救急隊最近接地域」という空間分析単位を考案し、平日・休日や時間帯ごとの搬送時間や医療機関への連絡回数をもとに消化出血患者の搬送特性を分析した。分析の結果、搬送特性により大阪市内は五つの地域グループに分類され、平日・休日や時間帯により搬送困難に明確な地域差があることが確認された。消化出血患者の発生状況と受入先となる医療機関の立地状況から検討すると、両者との間でアンバランスが生じている可能性がある地域が指摘され、それらの地域においては消化出血患者に対する病院群輪番制の導入が検討される。

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