著者
石井 和帆
出版者
神奈川大学日本常民文化研究所非文字資料研究センター
雑誌
非文字資料研究 = The study of nonwritten cultural materials (ISSN:24325481)
巻号頁・発行日
no.18, pp.81-110, 2019-09-30

『風俗画報』に収録された挿絵の数も膨大であり、且つ形態や描かれた時代、画題なども様々である。さらに、挿絵を描く絵師と、それに関連する記事を書く編集員あるいは地方の好事家も多数存在することで、極めて複雑であることが、同誌の資料的評価を困難にしている要因だろう。そこで、本論考では『風俗画報』の挿絵を描いた絵師を数人選別し、特に地方を描いた風俗画に着目して正否を分析するように試みた。 まず、その前提となる『風俗画報』を取り巻く出版背景についてまとめる。吾妻健三郎は石版印刷技術を習得後、同誌を創刊すると非常に人気を博した。そのため、全国に流通し、全国各地の風俗に関する投書が送られるようになる。また、編集会議では好事家による投稿記事を精査し、どの風俗を掲載するのか検討され、絵師には編集員から指示が降り、その編集方針に従って挿絵を描くことになる。遠方への取材の場合は、編集員に絵師が同行し、現地で絵師はスケッチを行い、編集員は記事にする風俗について調査するのが基本の形である。 このような方法で描かれた地方の民俗事象は、風俗を記録する視点を持った編集の意図が反映されたものであった。遠方への取材では編集員に絵師が同行する形をとるため、的確に特定の民俗事象を伝える場面の選択、モチーフやランドマークを配置する画面構成が行われる。そのため、絵師によって特定の民俗事象の描き方に大きな差異が生まれることはなく、編集員によって一定の統一性が図られているといえる。 中には、社会的・政治的背景によって意図的に描かれない場面や事物もあるが、描かれている事物や場面に関しては実際の風俗や出来事を表象している。つまり、戦争絵や災害絵など、絵師が直接見聞することが困難な場面を描く際は想像画にならざるを得ないが、全国各地の風俗を収集する場合は基本的には取材を行い、実景を得て描いているため資料的価値は高いといえるだろう。論文

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