- 著者
-
齋藤 達弘
Tatsuhiro Saito
- 出版者
- 福知山公立大学
- 雑誌
- 福知山公立大学研究紀要 = Fukuchiyama journal of research : journal of the University of Fukuchiyama (ISSN:24327662)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.1, pp.93-147, 2020
この論文の目的は,新潟市に本社を置く株式会社セイヒョーが1989 年から2019 年までの31 年間,どのように企業成長をファイナンスしてきたのかを検証し,その財務政策を考察することにある.セイヒョーは,主たる事業を冷菓(アイスクリーム・氷菓),和菓子(笹だんご・ちまき),冷凍倉庫における保管とする,創業100 周年を迎えた老舗企業で,70 年を超える上場の歴史を持つ企業ではあるが,売上高は40 億円ほど,従業員は80 人ほどの中堅企業である.取引先の代表社員で,大株主でもあった村山勤が,1993 年から12 年もの長い間,社長を務めた後,2006 年,OEM 契約先(明治乳業)出身の菅豊文を社長として迎え入れて退任した.村山勤は経営の停滞を招いた.菅豊文は停滞した経営を改革しようと精力的に取り組んだが,業績はより一層,悪化し,堅持してきた無借金経営を断念し,負債を残してわずか2 年で引責辞任する.後任の社長には生え抜きのベテラン,山本勝が就くものの,経営状況は変わらず,3 年で引責辞任する.代わって取締役2 年目の若手,飯塚周一が社長に就く.しかし,それでも経営状況は好転せず,2012 年6 月,株価低迷から時価基準に抵触し,上場廃止の危機に瀕することになる.自社株買いにより株価を引き上げ,何とか上場を維持した.その後,株価は安定し,上場廃止の危機は遠のいたように見えるのだが,新潟におけるセイヒョーのような上場中堅企業が上場し続けることの意義を再考する時期が来ている.