著者
齋藤 達弘
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 = 新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.129-229, 2016-03

この論文の目的は,キノコの生産販売大手,雪国まいたけの創業経営者,大平喜信の突然の辞任から,雪国まいたけが米系投資ファンドにTOB(株式公開買い付け)され,上場廃止に至るまでの一連の出来事をコーポレート・ファイナンスの視点から考察することにある.この論文では,視点を創業経営者が経営する同族企業のコーポレート・ガバナンスに広げて,雪国まいたけとはどのような会社だったのか,大平喜信はどのような経営者だったのかについても考察する.経営者の迅速な意思決定は拙速と紙一重で,迅速は成長を導く一方で,拙速は暴走を招く.この論文は,オーナーが支配する中堅企業について,創業経営者のワンマン経営や血族主義の弊害の典型的な事例を提示する.
著者
齋藤 達弘 Tatsuhiro Saito
出版者
福知山公立大学
雑誌
福知山公立大学研究紀要 = Fukuchiyama journal of research : journal of the University of Fukuchiyama (ISSN:24327662)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.93-147, 2020

この論文の目的は,新潟市に本社を置く株式会社セイヒョーが1989 年から2019 年までの31 年間,どのように企業成長をファイナンスしてきたのかを検証し,その財務政策を考察することにある.セイヒョーは,主たる事業を冷菓(アイスクリーム・氷菓),和菓子(笹だんご・ちまき),冷凍倉庫における保管とする,創業100 周年を迎えた老舗企業で,70 年を超える上場の歴史を持つ企業ではあるが,売上高は40 億円ほど,従業員は80 人ほどの中堅企業である.取引先の代表社員で,大株主でもあった村山勤が,1993 年から12 年もの長い間,社長を務めた後,2006 年,OEM 契約先(明治乳業)出身の菅豊文を社長として迎え入れて退任した.村山勤は経営の停滞を招いた.菅豊文は停滞した経営を改革しようと精力的に取り組んだが,業績はより一層,悪化し,堅持してきた無借金経営を断念し,負債を残してわずか2 年で引責辞任する.後任の社長には生え抜きのベテラン,山本勝が就くものの,経営状況は変わらず,3 年で引責辞任する.代わって取締役2 年目の若手,飯塚周一が社長に就く.しかし,それでも経営状況は好転せず,2012 年6 月,株価低迷から時価基準に抵触し,上場廃止の危機に瀕することになる.自社株買いにより株価を引き上げ,何とか上場を維持した.その後,株価は安定し,上場廃止の危機は遠のいたように見えるのだが,新潟におけるセイヒョーのような上場中堅企業が上場し続けることの意義を再考する時期が来ている.
著者
齋藤 達弘
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 = 新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.211-216, 2012-03

この論文の目的は,1993 年から2009 年までの16 年間の業種インデクスの月次投資収益率を使って,「ディフェンシブ」(食料品,医薬品,電気・ガス業,陸運業)は本当にディフェンシブなのかを検証することにある.そして,結論として,「ディフェンシブ」はいずれもロー・リスクで,なかでもポートフォリオの文脈で望ましい「ディフェンシブ」は電気・ガス業であることを示す.
著者
齋藤 達弘 Tatsuhiro Saito
出版者
福知山公立大学
雑誌
福知山公立大学研究紀要 = Fukuchiyama journal of research : journal of the University of Fukuchiyama (ISSN:24327662)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.29-55, 2019

この論文の目的は,新潟県長岡市に本社を置く岩塚製菓株式会社(以下,岩塚製菓)が,1990 年から2018 年までの29 年間,どのように企業成長をファイナンスしてきたのかを検証し,その財務政策を考察することにある.岩塚製菓が資産として保有する中國旺旺控股有限公司(Want Want ChinaHoldings Ltd.)の株式時価評価は,2014 年には900 億円を超え,岩塚製菓の株式時価総額のおよそ3 倍になった.しかし,それは必ずしも財務政策の結果とはいえない.その倍率は2018 年には2 倍弱になっているが,資産として保有する株式の時価総額が株式を保有する企業の時価総額よりも大きいという上場企業として異常な状態にあることに変わりはない.中國旺旺控股有限公司の株式は,その一部を売却することにより利益とキャッシュ・フローを得る手段になっている.岩塚製菓の市場評価が中國旺旺控股有限公司の株式評価に大きく左右される異常な状態を解消する手段の一つはMBO(Management Buyout)による非公開化であると考える.
著者
齋藤 達弘 Saito Tatsuhiro
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.96, pp.157-170, 2014-03

この論文の目的は,一正蒲鉾株式会杜が,店頭登録市場に株式を公開した 1989年から2013年までの25年間,どのように企業成長をファイナンスしてきたのかを検証し,その財務政策を考察することにある.一正蒲鉾は,株式を公開した後の資金調達を資本市場に求めることはなく,もっぱら銀行借入に頼り続けている.なぜ一正蒲鉾は株式発行による資金調達を選択しないのか.その理由は,経営権を脅かすことになりかねない株主構成の変化を回避し,ファミリー企業として存続させたいという企業の私物化にあるのではないかと考える.