- 著者
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橋本 寿哉
- 出版者
- 大東文化大学環境創造学会
- 雑誌
- 環境創造 (ISSN:13468758)
- 巻号頁・発行日
- no.25, pp.1-39, 2020-02
近世日本の一部の商家では、西洋起源の複式簿記と同一原理の複式決算を可能とする日本固有の簿記法を用いた体系的な会計実務が行われていた。そうした実務は、高度な組織体制を構築した大商家において見られたことから、その生成・発達の過程や要因を、商家の組織体制との関わりにおいて明らかにするため、17世紀後半に江戸に進出して木綿問屋として発展を遂げた伊勢商人・長谷川治郎兵衛家を事例として採り上げ、同家の会計実務の発達過程を、経営上の3つの時代区分に基づいて考察した。考察から、会計実務は組織体制の発展に対応して段階的な発達を見せ、最終的に一族の事業、家産、家計が本家によって一元的に統括される中央集権的な組織体制へ発展したことが、体系的な会計実務を完成させることになったことが明らかになった。