著者
大賀 郁夫 Ikuo OHGA 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-31, 2021-03-10

幕末期、諸藩にとって他藩の動向を正確に掌握することは、自藩の取るべき道を決定する指針になる最重要課題であった。 本稿では日向延岡藩を対象に、同藩が作成した文久二年の「風聞書 乾坤」の内容分析を通して、藩の探索システムを明らかにした。延岡藩では城附西方の高千穂・飛地宮崎郡・豊後にそれぞれ役所(代官所)が置かれ、そこを拠点に周辺諸藩の探索が行われた。各役所から届く風聞書の内容は多岐にわたり、情報提供者も上級武士階級から一般庶民に至るまでさまざまであった。 延岡藩が特に重視した探索対象藩は、薩摩藩・熊本藩それに豊後岡藩であった。「風聞書 坤」には九州諸藩の諸侯の評価が記されているが、評価が高いのは唐津藩世子小笠原長行・蓮池藩主鍋島直紀であり、岡藩主中川久昭や熊本藩主細川韶邦・久留米藩主有馬頼咸の評価は低い。この時期藩主の資質が求められていたことがわかる。文久二年という限定した期間の風聞書ではあるが、当時の民衆が諸侯や藩のあり方をどのように捉え評価していたかは、幕末期の地域社会を知る上でも重要である。

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大賀郁夫「幕末期譜代延岡藩の風聞探索活動」(『宮崎公立大学人文学部紀要』28-1、2021年)は、文久2年の延岡藩の探索活動を分析。重視された藩は島津久光の率兵上京があった薩摩藩、熊本藩、小河一敏が注目された岡藩。また、唐津藩世子の小笠原長行への評価が高いという。 https://t.co/hJiJDASYtl

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