- 著者
-
村田 真一
- 出版者
- 佛教大学歴史学部
- 雑誌
- 歴史学部論集 (ISSN:21854203)
- 巻号頁・発行日
- no.11, pp.107-122, 2021-03-01
「応令大神宇佐二氏任八幡大菩薩宮司事」と題される弘仁十二年の太政官符(「弘仁官符」)に引載された「大神清麿等解状」には、八幡神は「太上天皇の御霊なり」とあり、飯沼賢司はこれを聖武天皇のことだと指摘した。「弘仁官符」が八幡聖武同体説を示すのだとすれば、古代八幡信仰について八幡応神同体説を前提としない分析が求められる。この観点から以下のことを論じた、『続日本紀』の八幡神の出現と活躍は聖武天皇が皇神化を企図したものであり、また、それは百官諸氏が参集した八幡神の東大寺礼拝という儀礼において国家的神話として承認される。そして、このような聖武天皇と八幡神の特異な関係を前提に「弘仁官符」の八幡聖武同体説があらわれるのである。さらに「弘仁官符」は、八幡聖武同体説を基幹とした、大神氏による宇佐宮祭祀の必要性を訴える神話について、大宰府、太政官という官僚官人組織の経路において国家的に承認するものであった。八幡神聖武天皇応神天皇続日本紀弘仁官符