著者
伊藤 徳也
出版者
東京大学連携研究機構ヒューマニティーズセンター
雑誌
Humanities Center Booklet (ISSN:24349852)
巻号頁・発行日
no.10, pp.39-67, 2021-05-10

日本と中国の文化交流には少なくとも千年以上の長い歴史があります。その うち、中国人が積極的に日本文学を翻訳しその作品を読んだのは、この百年余 りのことにすぎません。1980年代以降特に近年、日本文学作品は、膨大な量 が翻訳・紹介されていますが、これはかつてなかった空前の出来事です。今回 の講演で紹介する周作人(1885−1967)は、中国に今ほど日本文学の読者 がいなかった二十世紀前半に、最も積極的に日本文学の翻訳・紹介を行ったパ イオニア的な文人作家です。1925年に中国最初の日本文学の教育研究組織を 北京大学内に設置したのもこの周作人です。周作人は、日本文学の専門家とし てというより、中国の新文化運動の強力な推進者として、日本文学に注目しま した。今回の講演では近代中国の文化史になるべく目を配りながら、彼と日本 文学との関わりを概観してみたいと思います。

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