著者
深町 英夫
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.98, pp.1-26, 2021-09-30

1970年代初頭のサンフランシスコ湾区において,日系人と華人という両コミュニティの間で相互交流が始まり,太平洋戦争中の敵対関係は徐々に克服されようとしていた。そして,白人が主流を占めるアメリカ社会において,自己主張を強めていた黒人とも異なる,「アジア系アメリカ人」という新たな帰属意識が,次第に形成・共有されつつあり,この傾向は特に3 世の若者の間で顕著だった。その一方で留学生を中心とする新1 世は,まだ居住国よりも出身国への帰属意識が強く,日米両国政府が沖縄返還を決定したのを機に,台湾・香港出身者が中国民族主義に根差した「保釣」運動を展開し,その中で沖縄の帰属にすら疑義が呈された。しかし,彼等の「保釣」運動は日本や中国よりもアメリカに帰属意識を抱く現地出身者,すなわち日系人は言うまでもなく華人からも,あまり支持を得ることはできなかった。

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