著者
三谷 博 深町 英夫 後藤 はる美 酒井 啓子 塩出 浩之 池田 嘉郎 平 正人
出版者
公益財団法人東洋文庫
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

この研究は近代に起きた6つの革命を公論と暴力の関係に着目しつつ比較する。取り上げるのはイギリス・フランス・日本・中国・ロシア・中東の革命で、日本と外国の専門家が互いに緊密な議論を行い、最後は英文論文集を刊行する。革命では公論と暴力が同時に誕生するが、暴力が蔓延する条件を探るのが第1の問題である。また、革命の終わりには暴力が排除されるが、その後、公論が維持されて自由な体制が生まれるのか、公論まで排除されて専制体制が生ずるのか、その分岐要因の解明が第2の課題である。さらに、諸革命がどんな連鎖関係に立っていたのか、アジアなど後発革命の側から先行革命の利用の様子を明らかにする。
著者
深町 英夫
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.98, pp.1-26, 2021-09-30

1970年代初頭のサンフランシスコ湾区において,日系人と華人という両コミュニティの間で相互交流が始まり,太平洋戦争中の敵対関係は徐々に克服されようとしていた。そして,白人が主流を占めるアメリカ社会において,自己主張を強めていた黒人とも異なる,「アジア系アメリカ人」という新たな帰属意識が,次第に形成・共有されつつあり,この傾向は特に3 世の若者の間で顕著だった。その一方で留学生を中心とする新1 世は,まだ居住国よりも出身国への帰属意識が強く,日米両国政府が沖縄返還を決定したのを機に,台湾・香港出身者が中国民族主義に根差した「保釣」運動を展開し,その中で沖縄の帰属にすら疑義が呈された。しかし,彼等の「保釣」運動は日本や中国よりもアメリカに帰属意識を抱く現地出身者,すなわち日系人は言うまでもなく華人からも,あまり支持を得ることはできなかった。