著者
前島 賢土
出版者
経済研究所
雑誌
経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.53, pp.133-154, 2021-10-05

新聞を資料として用いて,食品会社社員の偽計業務妨害という職務犯罪を考察した。食品会社社員の職務犯罪は,「給与などが不満で会社や工場長に怒りがあった」という食品会社社員の正当化によって促進された。この正当化は,自らが資本家や経営者によって搾取され,また,資本家や経営者によって指揮されていると考えている労働者階級の意識や観念,言説である労働者階級のイデオロギーをよりどころとした。労働者階級のイデオロギーは,労働者階級が資本家や経営者によって搾取され,また,資本家や経営者によって指揮されているという労働者階級の実在条件によってもたらされた。労働者階級の実在条件,労働者階級のイデオロギーは,正当化を通して,自他からの制裁という犯罪の統制要素を弱めた。

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