- 著者
-
清水 茂雄
- 出版者
- 飯田女子短期大学
- 雑誌
- 飯田女子短期大学紀要 = Bulletin of Iida Women's Junior College (ISSN:09128573)
- 巻号頁・発行日
- no.38, pp.1-121, 2021-05-27
本論文(「その2」)において,『古事記の言象学的構造』と題される論文の第2章の全体が展開される.「第2章」では,『古事記』の「火の神(ヒノヤギハヤヲノ神)」誕生から三貴子と言われる「アマテラス大御神」・「ツクヨミノ命」・「スサノオノ命(タケハヤスサノヲノ命)」誕生までの言象学的文法論的解明を行う.これらの神々の系譜の底辺には,述語が「主語の述語」に「成る」ことを開始してから,動詞に至るまでの言象学的文法論的プロセスが横たわっている.述語は自身の生まれ故郷の村(「始原の言葉」の領域)から出て行き,そこからの呼びかけの声(イザナミ)を振り切って(イザナキのイザナミからの離別)都会へと去る.述語が至った都会が,言象学的文法論的には,「論理的領域(「有るものが有る」の世界)」と言われるところ,いわゆる「この世」である.ここに,述語の生まれ故郷の村は,秘密に閉ざされて「無」となってしまい,有と無の論理的対立と「生と死」からなる生命の世界が生起する.