- 著者
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斎藤 元秀
- 出版者
- 法学新報編集委員会
- 雑誌
- 法学新報 (ISSN:00096296)
- 巻号頁・発行日
- vol.123, no.7, pp.383-410, 2017-01-16
二〇一四年三月、ロシアがウクライナのクリミア半島を併合し、国際社会の厳しい批判をよんだ。米国がロシアに対して厳しい経済制裁を実施した結果、米露関係は悪化し、一九七三年以来最悪の状態にある。しかし、中国は巧妙に立ち回り、ロシアとの友好関係の維持に努めている。 ウクライナ危機については、リチャード・サクワ、アンドリュー・ウイルソン、ラジャン・メノン、ユージン・ルマーの研究をはじめ、これまでさまざまな分析がなされている。しかし、断片的な分析はあるものの、中露関係の文脈でクリミア危機を体系的に考察した研究はほとんど見当たらない。 本稿で明らかにしたいのは、次の諸点である。⑴ロシアはウクライナをどのように位置づけているか、⑵中国にとってウクライナの重要性とは何か、⑶プーチン大統領はなぜクリミア併合(編入)を決意し、いかなるプロセスを経てクリミア併合作戦を実施したのか、⑷中国はクリミア併合をどのように考え、クリミア併合後、中露関係はどのように展開したのか、⑸予見しうる将来における中露関係の展望はどうか。