著者
富井 幸雄
出版者
法学新報編集委員会
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.123, no.8, pp.125-182, 2017-01

アメリカの移民退去手続は刑事司法手続に類似しており、移民裁判所(法務省)での聴聞を設けている。九・一一直後に法務長官の発したクレッピィ通達は、移民判事が安全保障上の特別の利益があると判断したなら、この退去聴聞にメディアを含む一般人の傍聴を禁止できるとした。これは、表現の自由を保障したアメリカ憲法修正第一条に反さないか。最高裁は一九八〇年のリッチモンド新聞社事件で、経験と論理のテストを打ち立てて、それが満たされる刑事裁判の公開や傍聴は公的アクセスとして同条で保障されると判断した。このテストが行政手続に分類される退去聴聞にも適用されて、同条の保障が及ぶか。最高裁の判例はないけれども、連邦控訴裁判所は、二〇〇二年のほぼ同時期にクレッピィ通達を合憲とも違憲とも判断している。移民法は安全保障法としての側面があり、外国人テロリスト送還裁判所を創設したり、政府側に聴聞にかけられている外国人がアクセスできない秘密の証拠を使用したりする手続を法定している。国際テロ対策が課題となるなか、安全保障と人権のバランスが出入国管理に要求される視点はわが国にも示唆的である。

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