著者
藏中 さやか Sayaka KURANAKA
雑誌
神戸女学院大学論集 = KOBE COLLEGE STUDIES
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.(1)-(16), 2021-12-20

本稿は、『恵慶集』の一本に記された断章的な歌がたりを発端に、武官として生涯を終えた源俊実(1046~1119)の官歴を確認の上、俊実の歌合出詠等の和歌事績を集成し、当該『恵慶集』記載本文を考証したものである。俊実は、検非違使の別当、また大納言として、政治的活動が伝わり、その和歌は『金葉和歌集』以下の勅撰集に3首入集する。本稿が対象とする本文は和歌3首と詞書分、行数わずかに31行分の独自本文で、俊実にまつわる歌話となっている。熊本守雄『恵慶集 校本と研究』(桜楓社 1978年)、『新編私家集大成』(古典ライブラリー Web 版)の『恵慶集』解題に全文が載るが、これまで特に論じられていない。前半は俊実が少将であった時、後半は検非違使の別当であった時のことを記す。なお3首のうち1首は『後拾遺和歌集』雑三巻軸歌の上東門院中将の作であり、同集詞書とは異なる詠作事情を示すことからこの点にも考察を加えた。 詞書中に「歌を好み給ふ」と記される俊実は、当意即妙に女に歌を詠み、盗人の歌才により罪を免ずる別当として描かれる。俊実の一面を活写した歌物語的な詞書からは、残された歌数は多くはないが公卿として堀河天皇歌壇に列した俊実の姿が浮かび上がる。

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