著者
吉川 徹
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.61-64, 2009

「教育格差」が広く報道され,その原因を家庭の経済力のばらつきが大きくなったことに求める議論を多く見かけるようになった。しかしこのような経済学的な解釈を強調しすぎると,背後にある社会学的な構造への目配りを欠くことになりかねない。私たちは,もともとこのトピックが階級・階層の「教育機会の不平等」という命題と重なりをもつことを想起すべきだろう。<br>こうした目配りをしつつ,家族社会学から「教育格差」を見直すとき,重要なキーワードとなるのは母親学歴である。なぜならば,これが子育ての志向性,ジェンダー,文化資本,女子就労などの多くの「戦略的」な概念の結節点にある変数だからである。とくにいま,この母親学歴の分布が,過去の高学歴化の帰結として大卒・非大卒に二極化しつつある現状には注目する必要があるだろう。要するに「教育格差」という現象は,近年の母親学歴の分断に起因する部分と考えることができるのである。

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孟母三遷とどない違うねんていうか…RT @sebastianus: 「教育格差」と母親学歴http://t.co/zU8mcNuH ちょっと面白そう

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