著者
吉川 徹
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.127-136, 2020 (Released:2020-07-01)
参考文献数
9

発達障害のある子どもの育児には,多数派の子どもの育児と比較すると,より多くの大人の時間,気力,体力,経済力を要する場合が多い.このため発達障害のある子どもを育てている家族に対しては,マンパワーの確保,知識とスキルの伝達,気持ちの支えなど複数の観点からの評価と実際の支援とが必要となる.また特に気持ちの支えに関しては,専門家による支援のみでこれを充足することは難しく,ピアサポートを含む形での相補的な支援がなされることも期待される.家族が安心して地域を頼ること,家族が自分の人生を楽しむことが,ひいては子どもと家族の「こじれ」を防ぐ決め手になるのではないだろうか.本稿では養育者の負担軽減に主眼を置き,発達障害のある子どもの育児に必要な家族支援について考えてみたい.
著者
吉川 徹
出版者
一般社団法人 日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.359-369, 2017-06-01 (Released:2019-08-21)
参考文献数
16

我が国では2006年の国連で採択された障害者の権利に関する条約を念頭に,障害児者に対する合理的配慮に基づく支援についての検討や国内法の整備が進められ,2014年に同条約の批准に至った。本稿では我が国の合理的配慮をめぐる状況を概観するとともに,限局性学習症をもつ人に対する合理的配慮の内容について,検討を行った。また限局性学習症を持つ人が合理的配慮を得るために,医療機関が果たすべき役割について,診断の際の留意事項,疾患教育や環境整備のための提言などについて,検討を行った。
著者
吉川 徹 キッカワ トオル Kikkawa Tooru

吉川徹. 階層・教育と社会意識の形成 : 社会意識論の磁界. ミネルヴァ書房. 1998. 304p.
著者
対馬 銀河 吉川 徹 讃岐 亮
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.23, no.54, pp.667-670, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
12
被引用文献数
4

The purpose of this report is to develop a method to analyze the relationship between the centers of cities and the commercial districts near the main stations. The classification using the proposed indexes revealed that the centers of the 66 local cities in Japan have been declining compared with the commercial districts near the stations. Multiple regression analysis showed, that the centers of the cities are likely to decline, if the populations are small, the distances to the main stations are large, the numbers of railway passengers are large, and the prefectural and city halls are far from the centers.
著者
竹内 やよい 遠山 弘法 吉川 徹朗 岡本 遼太郎 井手 玲子 角谷 拓 小出 大 西廣 淳 小熊 宏之 日浦 勉 中静 透
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.109, 2022 (Released:2022-10-22)
参考文献数
278

人新世の大加速とも呼ばれる気候変動の時代において、気候変動影響の顕在化、自然災害の激甚化・頻発化、COVID-19の世界的流行などの地球規模の問題が増大している。国際社会では、これらの問題は生態系の劣化や生物多様性の損失が要因であること、そして社会経済にも多大な損害を与える大きなリスクであることが共通の認識となりつつある。そのような状況を反映し、陸域生態系の多面的な機能を活用することで、低いコストで環境・社会・経済に便益をもたらし、社会が抱える複数の課題の解決に貢献する「自然を基盤とした解決策」という新しい概念に大きな期待が寄せられている。この解決策への社会的なニーズの高まりは、生態学が長年取り組んできた生物多様性や生態系の保全に関する課題を超えて、生態学が生物多様性や生態系が豊かな人間社会を継続し発展させる知的基盤となることや、生態学の社会的有用性を示す機会である。そこで本稿では、気候変動時代における「自然を基盤とした解決策」の実践に向けた生態学研究の方向づけを目的とし、陸域生態系の活用に対する社会的なニーズの現状を概観する。その上で、「自然を基盤とした解決策」の鍵となる陸域生態系の生物多様性や生態系機能に関する知見を整理して課題を抽出し、これらを踏まえて今後の生態学研究の方向性を具体的に示す。まず、現象の基礎的な理解という観点からは、生物多様性を含む陸域生態系と気候システムや社会システムとの相互関係性を含めた包括的な気候変動影響のメカニズムの解明と、予測・評価のためのプロセスモデルの高度化を進めること、そして同時に、陸域生態系と生物多様性の変化を示すための効果的なモニタリングと情報基盤の強化を行い、データや分析結果を社会に還元するフレームワークを構築することが優先事項である。より実践的な観点からは、「自然を基盤とした解決策」の実装や社会変革などにおいて共通の目標をもつ他分野との学際研究を積極的に行うことにより、実装における目的間のトレードオフを示すこと、健康・福祉の課題や生産・消費システムの中での陸域生態系や生物多様性への影響や役割を示すことなどが優先事項となる。気候変動に代表される不確実性の高い環境下で、効果的な「自然を基盤とした解決策」の実施ためには、その科学的基盤となる生態学の知見とツールは不可欠であり、またその実装を通じた社会変革への道筋においても生態学の貢献が期待されている。
著者
池上知子 高史明# 吉川徹 杉浦淳吉
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第59回総会
巻号頁・発行日
2017-09-27

企画趣旨 2015年6月に公職選挙法が改正され,選挙権が得られる年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられ,2016年夏の参議院選挙から適用された。選挙運動を行うことのできる年齢も同様に引き下げられている。これを機に若者に投票所に足を運んでもらうにはどのようにすればよいか各方面で議論されている。また,受験勉強や部活動に追われている高校生や大学生に政治参加を促す主権者教育が教育現場の大きな課題となっている。一方,半数近い若者が「政治のことはよくわらない」という理由から政治参加に対して不安や戸惑いを感じているという調査結果もある。わが国の将来を担う若者が社会や政治のあり方を変える大きな力となることは歓迎すべきことではあるが,そのためには,若者自身の問題意識の深化や判断能力の向上をはかることが必要である。問題に対する表面的理解,近視眼的判断が国や社会の指針を左右することがあってはならないからである。本シンポジウムでは,日本の若者が現代社会に内包されている問題(格差・貧困・差別等)をどのように認識しているかを探り,社会の深層構造の理解と変革への動機を促す手立てについて考えてみたい。インターネット世代のレイシズム高 史明 近年の日本では,在日コリアン(日本に居住する韓国・朝鮮人)をはじめとする外国籍住民に対する差別的言説の流行が大きな社会問題になっている。こうした流行は2000年代を通して進展してきたが,2013年頃から社会的な関心も向けられるようになり,2016年の「ヘイトスピーチ解消法」の成立・施行をもたらしている。報告者はこうした在日コリアンに対するレイシズム(人種・民族的マイノリティに対する偏見・差別)の問題について,特にインターネットの使用との関連性に注目して,実証的な研究を行ってきた。本報告ではその成果を踏まえて,「若者はいかにして社会・政治問題と向き合うようになるのか」という問いの中でも,「インターネットが日常となった現在において,若者はどのような経路で社会・政治についての情報と接触するのか,それはどういった内容のものなのか,その結果若者はどのような政治的態度を持つのか」について論じる。 まず,若者層の情報獲得手段の変化,つまり新聞を読む習慣の減少とインターネットへの傾斜について,既存の調査および発表者の持つデータにもとづき紹介する。次に,インターネット上の2つのコミュニティ(TwitterとYahoo!ニュースのコメント欄)における言説の特徴についての研究を紹介し,インターネットを通じた情報接触が若者の政治的態度に及ぼしうる影響について論じる。最後に,報告者がこれまで行ってきた調査データを,「若者とインターネットとレイシズム」という観点から再分析した結果をもとに,若者は他の世代と比べてどの程度レイシズムを受容しているのか,またインターネットの利用はどのような影響を若者に及ぼしているのかを論じる。社会意識論から見た現代日本の若者-社会的なものにかかわりたがらない若者たち-吉川 徹 若者論は社会学のなかでも常に活況を呈している分野である。90年代に制服少女を語った宮台真司から,数年前の古市憲寿の幸福な若者に至るまで,若年層の新しく繊細な文化的動向は,「失われた20年」と形容される同時代の見通しにくさを端的に論じてきた。その反面,冷静に見極めると,日本社会における若者のプレゼンスはかつてないほど低下している。これは第一に,若年人口の量的な縮小による。現在の日本の若者の同年人口は,70年安保当時の若者であった団塊の世代のおよそ半数にすぎない。第二に,若者の年齢拡大がある。社会的役割や地位が未確立なアイデンティティ形成期,あるいはモラトリアム期を若者のメルクマールと考えると,非正規化,晩婚化,パラサイト・シングルなどの実態は青年期を長期化させている。政府統計や官庁の公式文書においても,かつては20歳前後であった若者の年齢幅が,いつしか35歳までとされるようになり,現在では40歳未満という見方が定着しはじめている。40歳といえば,一昔前ならば若者の親の世代にあたる。第三に,若者の集団としての画一性が失われ,ひとまとまりの文化現象を呈さなくなっていることがある。浅野智彦らはこれらの動向を受け,若者が「溶解」していると指摘する。 そんななかで,社会に対する広い視野や,人生の長いパースペクティブをもたず,自己利益だけをコンサマトリーに考える傾向が若年層で浸透している。合わせて就労,文化,政治,消費などの社会的活動の積極性も他世代より低い。さらに詳しくデータを見ていくと,これは現在の若年層に一様にみられる傾向ではなく,性別,学歴(社会的地位),地域による分断を確認できる。政治的な関心や政治的な行動には,若者内でのセグメントの分断がとりわけ顕著に表れる。一例を挙げるならば,若年・非大卒層は社会的な積極性が他の層と比べて著しく低い。しかし,かれらこそが,雇用条件の悪化や,経済的困窮,非婚化,晩婚化の当事者として政策上の支援を必要としている人びとに他ならない。本企画においては,このような若者の政治参加をめぐる不整合を検討したい。格差問題への理解を促すゲーミング杉浦淳吉 社会には様々な格差が存在している。経済格差をはじめ,学校教育には「スクールカースト」のような問題もある。格差が生じるプロセスとその葛藤および解決策をゲームによって体験しながら理解する実践的研究を紹介する。ゲーミング・シミュレーションは現実社会の問題構造を現実と切り離された安全な空間で再現し,それを体験できる環境を用意することが可能である。格差問題を扱ったゲーミングとして仮想世界ゲーム(広瀬,1997)が挙げられる。初期条件として優位な集団と劣位な集団を設定し,集団間の葛藤とその解決の学習が可能である。また,階層間移動ゲーム(大沼,1997)では,ゲーム内で階層格差を作り出し,いったん格差が生じると,それぞれの立場から問題をとらえるようになっていく。この2つのゲーミングは,格差による葛藤に対して参加者全体の合意にもとづくルール変更というオプションが用意されている点が特徴として挙げられるが,大多数にとって納得のいく提案でなければルール変更は実現されず,格差を解消するルールの導入は困難となる。これらのゲームは30~40名の規模で長時間にわたる演習が必要であるが,ここでは5~6名のグループ単位で簡便なルール設定による格差の拡大と解消,及びルールの改訂に焦点をあてるゲームの活用方法を提案する。 大富豪というトランプゲームはルールの設定の仕方により格差拡大およびその葛藤と解決を学習する演習に展開できる (杉浦・吉川,2016)。大富豪は様々なルールのバリエーションが存在するが,格差拡大のルールは実際に順位の変動を小さくし,また逆転機会を提供するルールは順位の変動を大きくしており,ルール設定の仕方次第で格差の固定化・流動化が可能となる。グループ間でルールの異なるゲームを設定した演習を行うと,各々体験したゲームが表す社会が閉鎖的か否かといった評価に違いがみられた。ルール改正の話し合いにおいて,リーダーと認識されたプレーヤのリーダーシップタイプと新ルールの評価の関連を検討したところ,リーダーが民主的であると認識されていたグループの方が,リーダーが放任的あるいは専制的であると認識されていたグループよりも,ルール変更により逆転のチャンスが増えたと評価していた。若者の多くによく知られ楽しまれているカードゲームを格差問題の理解につなげる学習ツールとして展開するための方法と効果について討論する。
著者
吉川 徹
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.485-498, 2003-03-31 (Released:2009-10-19)
参考文献数
23
被引用文献数
2

日本の社会調査データの計量研究には, 2つの異なるアプローチが潜在している.このことはこれまで論及されることがほとんどなかったが, 本稿では高坂健次によってなされた数理社会学の方法論の整理と展開を糸口としつつ, 「数理-計量社会学」とその対極にある「計量的モノグラフ」という社会調査データの扱い方を類別する.そして, 高坂と吉川が共通の課題としている階層帰属意識の計量研究を例にとって, 両者の差異と距離を明確にする.さらに, 両者の間に位置する階層意識の「作業仮説-検証型の計量分析」の現状を示して, 計量社会意識論のあるべき姿を再考する.
著者
吉川 徹
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.92-101, 2002-05-25 (Released:2017-09-22)

現代階層論は、ジャーナリスティックには活況を呈しているようにみえる。しかし同時に様々な困難な課題を抱えていることも指摘される。本稿ではこの現状をふまえて、あらためて1955年以来のSSM調査研究を中核とする階層研究史を見直した。その結果、1980年以降の約20年は、戦後〜高度成長期という前時代と比較すると、十分な説明がなされないままで残されていることを指摘できる。そうであるからこそ、この空白の20年を埋めるものとして、原純輔と盛山和夫は「寛かさの中の不平等」という現代階層論の大きな指針を示しているのである。だがこの論調もなお、「戦後」という|日来の時代認識からは相変わらず自由ではない。それゆえにまた、時系列比較研究に特有の先行研究との分析の重複、新しい時代の特性(=現代社会論)の軽視が繰り返されるおそれがある。同時に現在の微細な階層差(豊かさの中の不平等)は、社会意識局面などに対する階層要因の影響力の弱まりをけじめとしたいくつかの課題を、階層研究のフロンティアにいる次世代の研究者に突きつける。
著者
吉川 徹朗 上田 恵介
出版者
国立研究開発法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

シキミという樹木の種子は猛毒をもつにもかかわらず、ヤマガラという鳥によって運ばれていることがわかっている。本研究では、この特異な相利関係がヤマガラの体内微生物に及ぼす影響を明らかにする。特に、シキミ種子に含まれる猛毒物質がヤマガラの内部寄生者を減少させる可能性に注目する。シキミ自生地の内外でヤマガラの糞を採取し、そこに含まれるDNAの量を分析することで寄生者などの微生物の組成やアバンダンスを明らかにする。そしてシキミの種子を食べることが、ヤマガラの体内寄生者を減少させるかどうかを検証する。
著者
吉川 徹
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.429-435, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
5

近年, 発達障害のある成人に対する就労支援のニーズが飛躍的に高まっている. しかし彼らの就労支援において, どのような支援が必要とされているかという点については, いまだ十分なコンセンサスが得られていない. 自閉スペクトラム症においては, 社会的動機づけの障害が中心的な役割を果たしていると考えられるようになってきている. また注意欠如・多動症においても遅延報酬障害が実行機能障害と並んで, 重要な役割を果たしていると考えられている. 本稿では成人発達障害者への就労支援の領域における, 動機づけの支援の必要性について考察する.
著者
安達 潤 吉川 徹
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.309-324, 2021 (Released:2021-01-05)
参考文献数
20

保護者の参加を伴う知的・発達障害の早期支援実践におけるICF情報把握・共有システム(安達,2018)の活用の効果を検討した.ICF情報把握・共有システムを用いて児の日常エピソードから支援関連情報を把握し,児の強みや支援効果の有無を確認して支援課題を絞り込み,支援者と保護者での情報共有・意見交換を通じて支援方法を考案・実行した.効果検証の質問票を行い,支援者からは環境要因を含む児の全体像を捉える大切さがわかった,保護者からは支援会議への参加で子育てのエネルギーをもらえたとの回答が得られた.活用前後の個別支援計画の比較では活用後の向上を認めた.一方,作業労力の軽減が今後の課題として示された.今後のシステム改善と運用方法の工夫は必要であるが,保護者が参画する早期支援実践への本システムの活用は,支援計画の実効性向上,支援者のスキルアップ,保護者の子育て支援によい効果をもたらすことが示された.
著者
Kikkawa Toru キッカワ トオル 吉川 徹
出版者
Osaka University Press
巻号頁・発行日
2016-06

Osaka University Humanities and Social Sciences Series
著者
髙田 琢弘 吉川 徹 佐々木 毅 山内 貴史 高橋 正也 梅崎 重夫
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
pp.JOSH-2020-0022-GE, (Released:2021-02-11)
参考文献数
26

本研究は,過労死等の多発が指摘されている業種・職種のうち,教育・学習支援業(教職員)に着目し,それらの過労死等の実態と背景要因を検討することを目的とした.具体的には,労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センターが構築した電子データベース(脳・心臓疾患事案1,564件,精神障害・自殺事案2,000件,平成22年1月~平成27年3月の5年間)を用い,教育・学習支援業の事案(脳・心臓疾患事案25件,精神障害・自殺事案57件)を抽出し,性別,発症時年齢,生死,職種,疾患名,労災認定理由および労働時間以外の負荷要因,認定事由としての出来事,時間外労働時間数等の情報に関する集計を行った.結果から,教育・学習支援業の事案の特徴として,脳・心臓疾患事案では全業種と比較して長時間労働の割合が大きい一方,精神障害・自殺事案では上司とのトラブルなどの対人関係の出来事の割合が大きかったことが示された.また,教員の中で多かった職種は,脳・心臓疾患事案,精神障害・自殺事案ともに大学教員と高等学校教員であった.さらに,職種特有の負荷業務として大学教員では委員会・会議や出張が多く,高等学校教員では部活動顧問や担任が多いなど,学校種ごとに異なった負荷業務があることが示された.ここから,教育・学習支援業の過労死等を予防するためには,長時間労働対策のみだけでなく,それぞれの職種特有の負担を軽減するような支援が必要であると考えられる.