著者
小山 直樹 相馬 貴代 市野 進一郎 高畑 由起夫
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.66, pp.1-12, 2005

マダガスカルのべレンティ保護区において, 1989年から2000年までの11年間, ワキツネザルの人口動態の研究をおこなうために, 我々は14.2ヘクタールの主調査域設定した。環境変化を研究するために, 主調査域を含む30.4ヘクタールの広い調査域も設定した。主調査域においては, 群れの分裂や追い出しなどの社会変動によって, 群れの数は3から6に増加した。その結果, 一つの群れの行動域の大きさは縮小した。広域の調査域には9科14種に属する大木が475本あった。最も豊富な樹種はキリー (<i>Tamarindus indica</i>) (n=289) で, 2番目がベヌヌ (<i>Acacia rovumae</i>) (n=74), 3番目がヴォレリ (<i>Nestina isoneura</i>) (n=66) であった。これら3種は全大木の90.3%を占めていた。大木の個体群密度は1ヘクタール当たり15.6本で, キリーのそれは10.3本であった。1989年, 14.2ヘクタールの主調査域内には, 1ヘクタール当たり12.7本のキリーが生えていた。<br>2000年に我々はキリーの大きさを再測定した。14.2ヘクタールの主調査域内のキリーの密度は, 1ヘクタール当たり11.2本に減少した。この減少は死亡したキリーの数が新規参入数より多かったためである。対照的に, 1才以上のワオキツネザルの数は1989年の63頭から2000年の89頭へと増加した。その結果, 1個体当たりのキリーの数は2.8本から1.8本に減少した。群れによって1個体当たりのキリーの数には大きな変異があった。CX群は最も豊かな地域を占めていて (1個体当たりのキリーの数は4.7本), T2群は最も貧しい地域を占めていた (1個体当たりのキリーの数は0.6本)。一方, キリーの果実の量は一本一本の木, 地域, 年により変動するだろう。たとえば,キリーの果実の収量は2000年は非常に少なく, CX群のキリーの果実の豊富さの得点は, 主調査域の平均得点より低かった。チャイロキツネザル (<i>Eulemur fulvus</i>) の数も増加している。チャイロキツネザルの採食習慣はワオキツネザルのそれと非常に類似しているので, ワオキツネザルにとって食物をめぐる種内と種間の両方の競争が激しくなってきているようだ。

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